・ 目次 / 第50話「船出のとき」 (前のページ/次のページ) ・
甲板上。欄干際。
浪がたまに音を立てる。
≪ザブルッ! バシャ!≫
ひかりとゆとりが並んで、星月夜の海を望み見ている。何か神妙な面持ちになっている。やがて、ゆとりが、
ゆとり「なんか、変な意味で懐かしい顔が次々に出て来たよね」
ひかりも同意。
ひかり「うん~。これも、時の流れと関係があるのかしら」
ゆとり「ええ~? 偶然じゃない?」
ひかり「でも、あの子たちも偶然?」
ゆとり「あ・・・」
ひかりとゆとり、後ろへ振り返る。すると、どこか別の場所で遊んでいたらしいせつな・はかな・みきなの3姉妹が、息を切らせながらトコトコと、ひかゆとのもとへ駆け寄って来た。
せつな「ひかりおねえちゃ~ん、ゆとりおねえちゃ~ん!」
はかな「これ、見つけたでしゅ~!」
みきな「きゃははは~!」
ひかゆと「ん?」
せつなとはかなが何か小さいものを一つずつ、それぞれの手の平の上に置いている(最年少のみきなは、別のものを二つ持って、嬉しそうにふたりの姉の少し後ろを駆けて来る)。
それを胸元に差し出されたひかりとゆとりが、訝るように覗き込んで、
ひかり「それは?」
ゆとり「タマゴ?」
確かにそれは小さなタマゴのカラだった。
ゆとり「ひかり、なんのタマゴだろ?」
ひかり「うう~ん。場所が場所だし・・・、カモメか何かの鳥のタマゴじゃないかなあ」
ところが、そのタマゴのカラに、突如ヒビが。
≪パリッ、パリッ!≫
驚くひかりとゆとり&せつな・はかな・みきなの3姉妹。
5人「はあああ!」
ひかり「生まれる!」
が、そのヒビの間からは、まず激しい発光が漏れる。
≪ピシャー!≫
ゆとり「なに!?」
そして、完全に割れる。
≪パリン! パリン!≫
すると、中からはカラの大きさ以上のものが、矢庭に空を切る如く飛び出して来たのだった。
≪パパアアアーッ!≫
ひかりとゆとり「あああ!?」
思わずのけぞるひかゆと。
ひかゆとたちの頭上を一気に越えて天高く飛翔したそれは、確かに翼を生やした鳥のような生き物たち二匹であった。それらは、いったん急速度で舞い上がると、やがてUターンするように急降下して来た。
≪ギュルル! ギュイーン!≫
驚きの目で見上げるひかりとゆとり、近づいて来るその二匹の顔を見て、ハッとする。
ひかり「セインフ!」
ゆとり「スワンフ!」
セインフ「ひーかり~!」
スワンフ「ゆとりい~!」
そう、羽根を生やした二匹とは、まさにセインフとスワンフなのだった。しかも・・・。
ゆとり「ん? 誰か乗ってるよ!?」
目のいいゆとりが真っ先に、セインフとスワンフの背中に乗る人影に気づいた。
ほどなくひかりも、それを目の当たりにする。
ひかり視線でセインフとスワンフの背中あたり、クローズアップ。まず足がチラッと映る。それぞれ羽毛の生えたような白色のブーツを履いている。やがて胴体が少し見え始めた頃、ひかりの瞳孔が大きく広がった。
ひかり「は・・・ああああッ!」
ゆとりも、すでに吃驚している。
ゆとり「え、え、ええー!?」
ひかりおよびゆとりの視線が、今、完全にそれらの顔まで捉える。セインフとスワンフの背中に乗ってやって来たふたりの人影の正体、それは、なんとピュアキュアルミナスとピュアキュアラピッドなのだった。
ひかり「ル! ルミナス!?」
ゆとり「ラピッド・・・!」
今、セインフとスワンフが完全に甲板の上、ひかゆとの前に到着する。と同時に、爆発する白煙のように姿を消して、背中に乗せていたPCL&PCRの懐へと収まった。
≪ポン、ポワン!≫
PCL&PCRは、スタッと綺麗に着地。
≪スタッ、スタッ!≫
笑顔でひかゆとを見つめるルミナス&ラピッド。
ルミナス&ラピッド「ふふ!」
ひかり「あ・・・あの」
ゆとり「どういうこと・・・?」
ルミナス「ひかりさん、ゆとりさん、最後のお別れを言いに来たのよ」
ひかり「最後の、お別れ・・・!?」
ラピッド「だって、わたしたち、あなたたちにお礼もせずに消えちゃってたんだもん。そんなの、よくないよね」
ゆとり「お礼・・・って?」
ラピッド「ひかり、ゆとり、わたしたちプリキュアは、あなたたちの中でホントにいろんな経験が出来たよ」
ひかり「経験・・・?」
ルミナス「ええ。ふたりはプリキュアは、いろんなひとと一心同体になって戦うことで、お互いにどんどん強く、近くなって行くの」
ひかり、ルミナスとラピッドの言外の意味を汲み取ったか、
ひかり「じゃ、じゃあ、あなたたちはまた・・・」
微笑みながらも神妙な口調で頷くルミナス。
ルミナス「ええ。また誰かの心を借りて、新たなプリキュアになって行く」
ラピッド「でも、時の流れは一つ。ふたりとの経験から得たことは、絶対忘れないし、次に戦うときも、ぜんぶ役立てて行くよ」
わけを理解したひかりに、やっと安堵の笑みが漏れる。
ひかり「ふふ。そうなの・・・。ううん。わたしたちこそ、おふたりと出会えたおかげで、すごいことをいっぱい経験させてもらった」
ルミナス「そんなあ・・・」
顔を赤らめ恥ずかしがるルミナス。
それを見たゆとりに、やっと余裕の笑顔が。
ゆとり「はは! だって・・・今だってそうじゃない? ルミナス! ラピッド! まさかこうして四人でお話できるなんて」
ラピッド、元気よく同意。
ラピッド「うん! 言われてみれば最高にアンビリーバブルうう~!」
ひかり、微苦笑。
ひかり「あらら!」
ゆとり「すっかり口癖まで伝染っちゃって!」
四人、親しげに笑い合う。
四人「あははははッ! あはははは!」
ひとしきりの笑いが已むと、四人、急に神妙な顔に。
ルミナス「じゃあ、ひかりさん、ゆとりさん、わたしたちはこれで」
ひかりとゆとり「うん」
ラピッド「ふたりとも、いつまでも元気でね!」
ひかり「ルミナスも」
ゆとり「ラピッドも・・・」
四人、ハイタッチ風に手を挙げて、手の平をパチッと重ねた後、5本の指と指をギュッと結び合う。そして、笑顔で見つめ合う。
四人「はは!」
握手が終わると、PCL&PCRの懐から、再びセインフとスワンフが飛び出す。
≪ポン、ポワン!≫
ずっと黙って見ていたせつな・はかな・みきなの3姉妹は、なぜか笑顔でウィンクして、セインフとスワンフを見つめた。
3姉妹「うふふ!」≪パチッ(ウィンク)≫
セインフ・スワンフも、笑顔で3姉妹に目配せ。
セインフ&スワンフ「へへ!」
そして、セインフとスワンフは、ルミナスとラピッドに、元気よく、
セインフ「ルミナス、ラピッド、行くセイン!」
スワンフ「出発進行なのスワン!」
PCL&PCRも、元気よく応じた。
ルミナス&ラピッド「うんっ! ヨーソロー!」
セインフとスワンフ、人間一人分乗れるほどに、翼と胴体を巨体化させる。
≪グググッ・・・≫
巨体化完了し、それぞれの背中にヒョイッと尻から飛び乗ったPCL&PCR。
≪スサッ、サワッ≫
体を光らせ出したセインフとスワンフが、天に向かって叫ぶ。
セインフ&スワンフ「いざ、行かん!」≪piccaaarrr!≫
ルミナスとラピッド、バッと即座に右腕を天高く上げて人差し指を突き出すと、セインフとスワンフのセリフを奪い継ぐ。
ルミナス&ラピッド「ミルキーウェイシップへーッ!」
セインフとスワンフ、飛び立つ。
≪パタパタパタパターッ≫
手を振って遠ざかるルミナスとラピッド。
ひかりとゆとりも、見上げて、手を振ろうとする。しかし、ルミナスとラピッドが、ほどなく下界のひかゆとたちを見下ろすのをやめて、各々の背後の上空へ振り向いたので、ひかゆとも、振り返そうとした手を中途半端に引き込めて、PCL&PCRに釣られるように上空へ視線を転じた。
ひかゆと「え・・・?」
すると、プリキュアのふたりを載せたセインフとスワンフの向かう上空には、何か大きな物体の影が控えていた。
ひかりとゆとり、驚きの眼差しでその物体を凝視。
ゆとり「あ! あれって・・・」
ひかり「ミルキーウェイシップ・・・!」
それは、紛れもなくあのミルキーウェイシップだった。今、そのミルキーウェイシップに、ルミナスとラピッドを載せたセインフ・スワンフの鳥のように小さくなった影が吸い込まれて行く。
と同時に、汽笛が高鳴った。
≪ポー! ポポーッ≫
ミルキーウェイシップ、出発進行。
≪プシュー・・・≫
音もなく星空の中を滑って行くミルキーウェイシップ。
せつな・はかな・みきなの幼い3姉妹は、極めて不思議そうな顔で、空を見上げていた。その背後に、誰かが立ち、3姉妹の肩に手を置く。
≪カタ・・・パッ≫
3姉妹、はっとして振り向き見上げる。
3姉妹「はあ?」
肩に手を置いたのは、ひかりとゆとりだった。ひかりとゆとりは、手を3姉妹の肩に置いたまま、空を、微笑みながら見上げ続けていた。それを見た幼い3姉妹も、安心したような笑みを浮かべて、再び夜空を見上げ直した。
ミルキーウェイシップの影は、今消えなんとしている。その船尾を見晴るかしながら、ひかりとゆとりは、笑顔で、今度こそ思い切り手を振った。
ひかりとゆとり「さよおおーならー! ミルキーウェイシーップ! ルミナースッ! ラピーッドッ! ありがとう、ア~ンド、愛してるうううーッ! ふたりはあああ、プリキュアああああーっ!」
フランスに向かう豪華客船・ミルキーウェイ号の甲板の上から、ひかりとゆとりの出した声の行き先。
そこは、美しい星月夜。
澄んだ空気の夜天一面に、オーロラの帯を欺くような乳色の天の川が、ぴかぴかゆっとりと、光り流れていた。
<ずっと、ずうっと、ありがとう>
『ふたりはプリキュア MilkyWay(ミルキーウェイ)』
* 完 *