・ 目次 / 第17話「ライバル」 (前のページ/次のページ) ・
生科部の部活中。4人の部員、ひかみうさわこな勢ぞろい。
珍しく顧問の桜井先生も立ち会っており、アイロンのかけ方を伝授している模様。
まず、アイロン板の上に置かれたスラックスらしきズボンがアップになり、その上にアイロンをかける手(桜井先生)が映る。
*桜井先生・・・名前はまだない。歳の程、30代。風貌は、なぎさの母を老けさせた感じ。メガネをかけたり、かけなかったり。性質は、わりと優しい。
桜井先生の顔、アップ。
桜井「いい? ズボンの折り目は、一番前のタックから一直線に引き伸ばすように押しつけて行くのよ」
先生、そう言いながら、ズボンのタック部にアイロンを当て、下に降ろすように引いて行く。蒸気がシャーッと噴き上がる。
≪シャー!≫
茶和子と小波美が、黙って興味深そうに、桜井先生の手つきを眺める。
茶和子&小波美「hu・・・」
先生、微笑みながら、ズボンを掲げる。
桜井「はい」
掲げられたズボンには、とてもキレイな折り目がついている。
美羽も茶和子&小波美も一斉に、目を輝かせて、
美羽&茶和子&小波美「キレイ〜っ!」
しかし、端っこのひかりだけはちょっと浮かぬ表情。そして、窓の外をチラチラよそ見などして、集中力を欠いている。
その窓の外には、体育館の屋根の一部が映って見える。
館内から、バッシュのキュッキュと床に擦れる音と、ボールをバンバンとドリブルする音が、混ざり合うようになって、家庭科教室まで聞こえて来る。
ひかりの顔、アップ。
ひかり「n・・・」
懐のセインフが、心配そうに、
セインフ「ひかりぃ・・・」
再び桜井先生の顔に戻る。
桜井「バスケのユニフォームの生地は、これとは大分違うんだけど、ズボンの折り目付けは、アイロンかけの基本だし、まずはここからね」
小波美、嬉々とした笑顔で、話し出す。
小波美「来週週末の金土日、バスケ部の合宿に、一緒に行けることになるなんてラッキーッ!」
茶和子、小波美の言葉を受けて、柔和な笑顔で、
茶和子「金曜日が学校創立記念日でお休みだから、6月なのに3連休になるのよね」
小波美「そう! どうせどこにも遊びに行く予定なかったし、グッドタイミングかもね」
さらに茶和子が、落ち着いた笑顔で、今度は美羽に、
茶和子「加賀山先輩、よく話がつきましたね」
美羽、ちょっと困ったような笑みを浮かべながら、
美羽「奈緒から、バスケ部のマネージャーやってた子が、根無乃木中学との合同合宿直前なのに、勉強に専念したいからって言って急にやめちゃって困ってるって聞かされてね」
無表情で美羽の話を聞く茶和子の顔が映る。
茶和子「hun・・・」
美羽、続ける。
美羽「初めは冗談のつもりで、生科部が代行業したげましょうかって言ってたら、横にいたゆとりが本気にしちゃって、それを三島先輩に伝えたらしくってさ」
すると、窓の外をぼんやり見ていたひかりが、美羽の話に反応して振り向く。
ひかり「ゆとり、さんが・・・?」
美羽、続ける。
美羽「そしたら、三島先輩がうまく話に乗ってくれて、OK出ちゃったんだよね。ていうか、ゆとりのことだから、押しに押しまくって、OK出させたって感じかもしれないけどさ」
茶和子、微笑んで、
茶和子「じゃあ、早瀬先輩さまさまですね。ねっ、小波美っ」
小波美は、無邪気に笑って、
小波美「うん! 夏休み前に小旅行に行けるなんてサイコー!」
桜井先生、呆れて苦笑しながら、
桜井「ちょっと松間さん、これは旅行じゃないのよ。・・・でも、合宿に参加させてもらう以上、快適に過ごしたいし、・・・」
「ウン、ウン」とニッコリ頷く茶和子と小波美が映り、また桜井先生の顔に戻る。
桜井「バスケ部の役に立てるように、まずはアイロンかけをちゃんと覚えることね。そしたら、合宿も楽しくなるでしょ?」
また快く同調するようににこやかに「ウン、ウン」と頷く茶和子と小波美が映る。そしてまた桜井先生の顔にもどると、意地悪そうな声になって、
桜井「アイロンかけ覚えられないひとは、邪魔になるだけだから置いて行くわよ〜」
茶和子&小波美「えええ〜!」
小波美「じゃ、じゃあ、まずわたしからっ!」
小波美は、そう言って急に焦り顔になり、率先してアイロンを握ったのだった。
第5幕と同じシチュエーション。
生科部では各人順番にアイロンの実習を続けていたが、間省略で、最後にひかりの順番。なお、いつのまにか顧問の桜井先生は職員室に引き上げたらしく、いなくなっている。
ひかり、最初はズボンのタックに合わせてスーッとアイロンを引いていたが、途中で引っかかって、ジューッと斜めの皺をつけてしまう。
ひかり「あっ!」
美羽、訝しげな顔で、
美羽「ひかりらしくないわねえ。どうしたの?」
ひかり、決まり悪そうに、
ひかり「ううん。別に・・・」
そのとき、背後のドアがガラッと開き、奈緒とゆとりがバスケユニフォームのまま入って来たのだった。