・ 目次 / 第15話「午後のゆとり」 (前のページ/次のページ) ・
デラタコカフェの裏あたりの公園ベンチ。
そこには、ひかりと美羽が座っている。美羽はしょ気ている感じ。ひかりは気遣うように美羽をチラチラ見ている。
ひかり「e・・・」
そこへ、ゆとりが、奈緒を連れて現れる。
ゆとりは、まだやや離れたところから、明るく手を振り、大きな声で、
ゆとり「ひかり〜!」
ひかり、ゆとりに気付き、スタッと立ち上がると、ちょっと笑顔で、
ひかり「あ・・・」
隣の美羽は、座ったまま、チラッとゆとりのほうを見る。隣に奈緒がいるのを見つけ、ちょっと目を逸らす。
美羽<u・・・!>
奈緒は、美羽を見つけると、内心呟く。
奈緒<美羽・・・>
ゆとりたち、到着。ゆとりは、立ち上がったひかりと向き合い、
ゆとり「連れて来たよ!」
ひかり、笑顔で、
ひかり「お疲れさま」
ゆとり「ひかりもお疲れ!美羽をよく呼び出せたね」
後ろの美羽がひかりよりも先に口を開く。
美羽「ここに来ないと話せないことがあるっていうから、仕方なく来たんだよっ」
ひかりとゆとり、ちょっと心配そうに顔を見合わせる。
ひかゆと「・・・」
しかし、その直後ゆとりは気を取り直したように笑顔を作り、両腕を後ろ手にして、ひかりの背後に座る美羽を覗き込む。
美羽は、まだ目を合わせない。
ゆとりは気にせず、元気よく、後ろ手にしていた片手(右手)を前にサッと出す。
その手はあの美羽人形を持っていたのだった。
ゆとり、元気よく、それを見るように美羽を促す。
ゆとり「美羽っ、これ!」
美羽は顔を上げ、ハッとなりながらも、何も言わずに見ている。
美羽「・・・!」
ゆとり、さらに、もう一方の左手も出して、
ゆとり「それから、こお〜れっ!」
と言って、笑顔で奈緒人形も示したのだった。
さすがにこれには美羽も、驚きの表情を示した。
美羽「あっ!」
ゆとり「美羽が奈緒のために作ったのって、これだよね?」
美羽、人形から目を逸らしながら、
美羽「う・・・うん」
ゆとり「奈緒は、勉強机の上に、このふたつを並べて置いてたんだよ。ネ、な〜お」
ゆとり、そう言って奈緒のほうへ振り向く。
奈緒、体裁悪そうに、
奈緒「え?うん・・・」
ゆとり、にっこり笑って、
ゆとり「だから、美羽、お人形捨てたんじゃない?とかって言ったこと、奈緒に謝ったほうがいいよ」
ところが、美羽、これを聞いて、怒れるウサギが飛び跳ねるようにベンチから立ち上がり、
美羽「なんで!? どおおしてアタシだけが謝らなきゃいけないのお!!?」
ゆとり、ちょっとタジタジの表情になりながら、
ゆとり「あ・・・ああ〜悪い悪い。美羽だけじゃなくってさ、奈緒にも謝るべき点はあるよ。でも、物事には順序ってものが・・・ねえ・・・」
ゆとり、最後は美羽をなだめるように、愛想笑い。
しかし美羽の怒り解けず、
美羽「大体、そのお人形を机の上に並べて置いてたってことは、これからまとめて捨てようとしてたってことかもしれないでしょ!?」
美羽の暴言ここに極まる。
これには、感情を抑えていた奈緒も、さすがに怒った。
奈緒「なっ! なんてこと言うんだよ! 美羽のバカッ!!!」
奈緒が、数秒美羽を睨むカットあり。
美羽は、少したじろいだようになる。
美羽「u・・・」
しかし、やがて美羽は、意地になったように口を開く。
美羽「バカはそっちよ!そんなお人形をいくら並べてたって、もうアタシとあんたは昔みたいには戻れないの。ひかりも入れて3人になった時点で、昔とは違ってたんだよ」
これを聞いてドキッとしたのは、ひかりである。
ひかり「ええっ!?」
一方、奈緒は、美羽の暴言にショックを受けたようになった後、感情を押し殺し、
奈緒「ああ・・そうだね。3人ってバランスよくないもんね。昔のふたり仲良かったときを引きずって、こんなお人形を机に飾ってたアタシがバカだったよ!」(最後は吐き捨てるように)
ゆとり、仲裁しようにも出来ず、ふたりを交互に見ながらもどかしそうに天を仰ぎ、
ゆとり「ああん、もうっ〜!」
そのときひかりが不意に、寂しそうな笑みを浮かべ、ポツリ。
ひかり「そっか・・・」
ゆとなおみ〜う、一斉にビクッとなって、ひかりのほうへバッと振り向く。
ゆとなおみ〜う「えっ!?」
沈黙の中、ひかり、寂しそうに微笑み、誰も見ずに、下を俯き、
ひかり「わたしが・・・一番、いけないのよね。奈緒と美羽の間に割り込んだりして」
美羽「ひかり・・・」
奈緒、焦って、
奈緒「ひかり、ちょ、ちがっ!」
ゆとりは言葉が出ない。
ゆとり「・・・」
ひかり「ううん、いいの。今まで仲良くしてくれてありがとう。でも、わたしは、奈緒と美羽が仲良くしてるのを見てるのが好きだったから。もう、間に割り込んだりしないから、また仲良くしてね」
美羽と奈緒、呆然とした表情で、ひかりを見ている。
ほどなくひかりは、徐ろに歩み出した。
そして、下を俯き笑みながら5歩ほど進んだところで、急にダッシュ。顔は陰になっていて見えない。
ゆとり、驚き、引きとめようとして、
ゆとり「あっ! ひかり! 待って!」
なおみ〜うも、同時に、
なおみ〜う「ひかりい!」
そう叫んで、ひかりを追いかけようと半歩ほど進む。
しかし、ここでゆとり、なおみ〜うに向かって、激昂。
ゆとり「あなたたちはここにいてっ!!!」
なおみ〜う「えっ!?」
なおみ〜う、足をピタッと止めると、同時にゆとりのほうへ振り向く。
なおみ〜うの視界に飛び込んだのは、ゆとりの激しい憤怒の表情!
ゆとり「もういい加減にしてっ! 自分たちのしてること、わかってる!? あなたたちが話をややこしくしてるんだよ!」
美羽「でも・・・」
ゆとり、何か言いかけた美羽に向かって、
ゆとり「美羽! 自分が仲間はずれにされたと思い込んだら、人の言い分も聞かずに、なんでもかんでも悪いほうに受け取ってえー! どうしてもっと素直になれないの!?」
美羽、落ち込んだように俯く。
美羽「う、うん・・・」
ゆとり、次に奈緒に向かって、
ゆとり「奈緒も奈緒だよ。何が<ひかりが妹みたいに見える>だよ。ひかりに頼り切って負担かけてるの、自分のほうじゃない!?」
奈緒、ハッとなって、
奈緒「そ、それは・・・」
ここでゆとり、声を荒げるのをやめ、しんみり言い聞かせるように、
ゆとり「いい?ふたりが喧嘩すればするほど、ひかりは悲しむんだよ?」
なおみ〜う「え・・・」
ゆとり「もしふたりが、本当にひかりの大親友で、ひかりの気持ちを考えてるなら、ひかりを巻き込んだりしないで、ふたりだけで仲直りするように話し合ってみたらどう?」
なおみ〜う「・・・」
ゆとり、なおみ〜うがだいぶ堪えたらしいのを感じると、一転、爽やかな笑顔になり、両手に持っていた奈緒人形を奈緒に、美羽人形を美羽に、同時にポンと手渡す。
ゆとり「はあ〜い!これっ!」
なおみ〜う「あ・・・」
なおみ〜う、それぞれに持たされた人形を見た後、互いを気まずそうに見合う。
ゆとり「ね!」
ゆとり、ふたりの反省し始めた様子を一人微笑んで確認すると、急にキッと毅然とした表情になる。
ゆとり「ん!」
そして、ゆとりは、ひかりが走って行った方向へと目を転じ、慌しく追いかけて行ったのだった。
ゆとり「ひかりいい〜!」
ひかりのポシェットから顔を出したセインフが、そのまま翼を広げてパタパタ飛び出し、
ひかり、一瞬宙を見上げて驚いたあと、こちらへ振り向き、ニッコリ。