・ 目次 / 第15話「午後のゆとり」 (前のページ/次のページ) ・
再び多幡家。
ゆとりと奈緒は、外出するため玄関まで来ている。奈緒は、セーラー服の上着を着て、白の制帽もかぶっている。
やがて奈緒、廊下の向こうを見ながら、奥の部屋まで届く声で、
奈緒「えちかー!ちょっと出かけて来るねー!」
ゆとりは、そばでつぶやいた。
ゆとり「えちか・・・?」
すると、さきほどゆとりが会った奈緒の妹が出て来たのだった。
彼女は、黙って、ゆとりの前に進み、立つ。
ゆとり、何事だろうと思い、黙ってその妹を見つめ返したが、ふと、手にカメラを持っていることに気づいた。
ゆとり「ん?」
すると、その妹は、ためらいがちに、
奈緒・妹「あの・・・写真・・・」
ゆとり「え?」
奈緒・妹「写真一枚撮らせてもらえませんか・・・?」
ゆとりは、一瞬キョトンとしていたが、すぐにフレンドリーな笑顔で、
ゆとり「あ、うん、いいよ!」
横の奈緒は、意外そうな顔で妹とゆとりを交互に眺めていた。
奈緒「haa〜〜」
多幡家の門前。
そこで、ゆとりの写真撮影が執り行われる。
ゆとり、膝に手を置き、中腰でピースするようなギャルっぽいポーズを取りながら、
ゆとり「こんな感じ?」
しかし、奈緒・妹、苦笑いを浮かべ、
奈緒・妹「えっとお・・・ふつうにしててください・・・」
ゆとり「あ? ふつう? んじゃ、こお?」
ゆとり、両手を後ろ手に回し、ニッコリ。
奈緒・妹、恥ずかしそうに微笑んで、
奈緒・妹「はい。それでいいです」
カメラのシャッター音、パシャリッ。
奈緒・妹、ゆとりに近づき、赤面しながら、
奈緒・妹「んと・・・ありがとうございました・・・」
ゆとり、にっこり笑顔で、
ゆとり「どういたしましてー。写真現像したら見せてね。えっと、えちかちゃんだっけ?」
そこで、奈緒が口を挟む。
奈緒「そお。英知香(えちか)。みんなからは、えっちゃんって呼ばれたりしてる」
ゆとり「へえ・・・」
ゆとり、英知香のほうへ向き直し、笑顔で、
ゆとり「じゃあ、えっちゃん。またねっ!」
英知香、赤面しつつニッコリ。
英知香「はいっ!」
そう言うと、英知香は、家の中へ駆け込むように入って行ってしまった。
英知香がドアをパタンと閉めた後、姉の奈緒が、ちょっと意外そうな声で、
奈緒「へえ〜。あの子が自分からひとに声をかけるなんて珍しいなあ」
ゆとり、キョトン顔で、
ゆとり「そうなんだ?」
奈緒「うん・・・。それに、あの子、自然の風景ばっかり撮って、人を撮ることなんて滅多にないのに」
ゆとり、笑顔で、
ゆとり「えっちゃん、写真が趣味なんだ?」
奈緒「うん、学校じゃ、写真部だよ」
ゆとり「写真部? 本格的なんだね」
奈緒「言ったでしょ。アート系のセンスがあるって」
ゆとり「ああ、そういえば・・・」
奈緒「それに、新聞記者だったお父さんの影響もあるのかな。・・・だけど、ホントに珍しいな。初対面の人は大抵怖がるのに・・・」
奈緒、もはや英知香のいない表玄関をじっと眺めながらそう言った後、ゆとりほうへ振り向き直して、ちょっと苦笑しつつ、
奈緒「ゆとり、よっぽどあの子に気に入られたんだよ」
ゆとり「ええ〜、わたしがあ〜?」
ゆとりも、面食らったような苦笑いを浮かべたのだった。
異世界間を矢のような速さで飛翔しながら、ときびとの庭へ向かう途中のリバーサス。
リバーサス、さきほどのニヒルーザとの会話を想起している。
ニヒルーザ「リバーサス・・・」
リバーサス「はっ!」
ニヒルーザ「もはや頼れるのはお前だけだ」
リバーサス<キャプテン・ニヒルーザも、ようやく俺の実力を認めたか。ムージョ如きに頼り出したときには、どうなることかと思ったが・・・>
さらに回想。
そして憤然と向き返り、リバーサスに逆時計を突きつけ、
ニヒルーザ「行け、リバーサス! そして必ずシスター・シーズンを始末しろ。ムージョとは一味違うところを見せてみろい!」
リバーサス<それにしても、ナラクーダから時の流れを一掃するあの逆時計の威力・・・>
ニヒルーザの突き出す逆時計が、ことさらにアップ。
リバーサス<あの逆時計さえあれば、この俺も・・・>
リバーサスは、ソコまで独白すると、言葉を切り、再び前を向いて、ときびとの庭へ急行する速度をグンと上げたのだった。