・ 目次 / 第15話「午後のゆとり」 (前のページ/次のページ) ・
第1幕の続き。
ゆとり、すでに奈緒の部屋にお邪魔している。
奈緒の部屋の構造。洋室だが、8畳分あり、ベッドと勉強机とミニコンポとクローゼットがある。それ以外のスペースは、板張りのフロアで、正方形のブルーカーペットが敷かれ、その上に透明ガラスのミニテーブルが置かれている。
ゆとりは、そのテーブルの前に座らされ、奈緒が来るのを待っている。
ゆとり、当然、部屋をキョロキョロ見回している。
ゆとり「こざっぱりしてるう。・・・あっ!」
ゆとりが驚いたのは、例の美羽人形が、勉強机の上に大事そうに置かれていたからである。
しかも、今はその隣に、やはり上手ではないが、微かに奈緒の俤を偲ばせるぬいぐるみ人形が並べ置かれていた。
ゆとり、無言で微笑む。
ゆとり「h〜m」
やがて奈緒が、ジュースとお菓子を置いたお盆を持ってドアを開ける。
奈緒の衣装。下は濃紺のセーラー服の揃いのパンツだが、上着は脱いでいて、大き目の白ワイシャツをラフに羽織り、裾はズボンの外に出している。足は素足。
奈緒、申し訳なさそうに、
奈緒「ゴメンね、こんなものしかなくってさ。両親が共働きで、まだどっちも帰って来てないんだよね」
ゆとり、屈託のない笑顔で、
ゆとり「そんなこと気にしなくていいよ。アタシこそゴメンね。急に来ちゃって。ビックリしたでしょ?」
奈緒、お盆をテーブルに載せ、お菓子の袋を破りながら、含み笑いを浮かべ、
奈緒「へへ。まあね。でも、ゆとりも驚いたんじゃない?いきなり妹が出て来て」
ゆとり「ああ・・・そうだね。もう少し奈緒に似てたら驚かなかっただろうけど、全然似てないから、おうち間違えたかと思っちゃった」
奈緒、ほくそえみながら、
奈緒「よく言われる。まるでタイプが違うって。外見もそうだけど、あの子、性格もわたしと違って内気でシャイなんだー」
ゆとり、お菓子をバリッと頬張ると、笑顔で、
ゆとり「うんっ、なんとなくほんあ(そんな)はんじ(感じ)あ(が)ひた(した)」
奈緒も屈託のない笑顔で、お菓子を同じように頬張りながら、
奈緒「えもえ(でもね)、いもうお(と)、あはま(あたま)いいひ(し)、んっ(やっと飲み込んで)、・・・妹、頭いいし、アート系のセンスあるし、第一、女の子らしくて優しいしさ、姉ながら一目置くところがあるんだよねー」
ゆとり「へえ・・・(もぐもぐ)」
ゆとりはまだむしゃむしゃ食べている。
奈緒は、少し下を俯いて、何か考えていた。
奈緒「・・・」
が、やがて顔を上げ、
奈緒「なんっとなくだけど・・・ひかりとダブっちゃうんだよね・・・」
ゆとり、ハッとなる。
ゆとり「ひかりとっ?」
奈緒、笑み、
奈緒「うん。ひかりってさ、危なっかしくてほっとけないようなところがあるジャン?」
ゆとり、ニッカとなって、
ゆとり「ああ〜。あるあるう!」
奈緒「それでいてさ、なんかいつも先を行ってるような、追っかけても追っかけても追いつけないような、そんなものも感じるし」
ゆとり、大きく頷き、
ゆとり「そう!わかるわかるうう!」
奈緒「アタシが美羽と一緒に初めてひかりを遊びに誘ったとき、そういう気持ちが特に強くって、なんだか妹を遊びに連れて行くみたいな感じだったかも」
ゆとり「・・・」
ゆとりは、集中しきって無言で、奈緒の次の言葉を待つ。
奈緒「でも、喜んでるのはわたしたちのほうなんだよね。ひかりと一緒に遊べて誇らしいっていうかさ」
ゆとり、興味津々の眼差しで真剣な顔になり、
ゆとり「へえ・・・奈緒と美羽が、初めてひかりを誘ったときってどんな感じだったんだろ」
と応じた後、情の籠もった微笑を浮かべ、優しい口調で、こう言った。
ゆとり「ねえ、奈緒、そのときのお話、ちょっと聞かせてくれない?」
奈緒、少し意外そうに、
奈緒「え?」
となったが、すぐ穏やかな笑顔に戻り、
奈緒「うん、いいよ。それはね・・・」
第15話「午後のゆとり」!(ひかゆと読み上げ)
マックスハート第15話が回想される。
なおみ〜う、ひかりの席の前にやって来る。
おもむろに声をかける奈緒。
奈緒「九条さん!」
寂しそうに俯いていたひかりが、顔を上げ、前に立つ奈緒と美羽の顔を見ながら、
ひかり「多幡さん・・・、加賀山さん・・・」
奈緒「九条さんも一緒に行かない?今度の日曜日!」
ひかり「ha?」
一瞬、意味がわからずキョトンとするひかり。
フリーマーケットに行く道中。
左から、美羽、奈緒、ひかりの順に横一列になって歩く。
奈緒「ねぇねぇ、九条さんて、休みの日ってどうしてるの?」
ひかり「いつもは親戚のお店を手伝ってます」
美羽「へぇ〜、何のお店?」
ひかり「たこ焼き屋さん」
美羽「へぇ〜」
奈緒「今日は大丈夫だったの?お店手伝わなくて」
ひかり「ハイっ。アカネさんが折角お友だちに誘われたんだから、行っといでって。何事も社会勉強だって・・」
奈緒、困り顔になり、ひかりに、
奈緒「九条さん、あたしたち同級生なんだから、『はい』はヘンだよ。『ウン』でいいよ、『ウン』で」
ひかり、奈緒の申し出に戸惑いの表情を見せ、きまり悪そうに俯く。
ひかり「あ・・・・・は、はぃ・・」
奈緒「ヤン様グッズだァ!・・ヤン様カップ、あ、これって激レア、ヤン様手帳お〜!これが全部百円なんて信じらんないッー!」
これに対して、美羽は、奈緒を馬鹿にしたような顔と声で、
美羽「フン!奈緒、ヤン様なんて・・やっぱり時代は、ビラット・プットよ!」
奈緒、向きになる。
奈緒「な〜にがビラプよ!大体カレにするったって、あんたねぇ・・」
奈緒、美羽からクッションを取り上げて、ビラプが喋っているように歪めてみせる。
奈緒「キャンユースピークイングリーッシュ?」
美羽「もぉ!奈緒こそヤン様と話せるの!?」
奈緒、しばしの沈黙の後、呵呵大笑。
奈緒「ムリだっつーの!」
美羽「ハハ!ダメじゃ〜ん!」
最後はふたりともキャラキャラ笑って、難なく和解。
ひかりも、わけがわからないまま、釣られて微笑んでいる。
ひかり「huhu」
3人並んでベンチに座っていたが、矢庭に奈緒が立ち上がり、なぎさの真似を始める。
奈緒「ほのか!今日の試合は絶対に負けられない!『排水の瓶』よ、『排水の瓶』!」
美羽も、トコッと立ち上がると、調子に乗ってほのかの真似を始める。
美羽「なぎさ、それを言うなら『背水の陣』でしょ」
奈緒と美羽、手を取り合って飛び跳ねる。
奈&美「なんてね、なんてね、なんてね!」
奈緒が高校生たちのいるほうから、ひかりに呼びかける。
奈緒「早くおいでよ、九条さぁん!」
ひかりは、奈緒から、3オン3と呼ばれるストリートバスケのメンバーとして指名されたのだった。しかし、ひかりは、まさか自分がバスケをさせられるとは露ほども思っていなかったので、一瞬奈緒の言葉に無反応だった。
ひかり「・・・」
が、次の瞬間、ようやく意味を理解し、
ひかり「えェェェェッ!!!」
普段のひかりにはあるまじき驚天動地のビックリ顔になったのだった。
美羽「ホラ早く、何事も社会勉強でしょ!」
ひかりの背を押す美羽。
ひかりは、動揺のあまり、もはやまともに声も出せない。
ひかり「aaa・・・」
ドリブルする高校生からボールをとろうとするひかり。
ひかり「あああ、それ、貸してくださ〜い!」
あっさりとかわされ、頭から転ぶひかり。
中略。
ひかりの元へ転々として近づいて来るバスケットボールのコボレだま。
ひかりは、どうしてよいかわからず、無為に佇立したまま見下ろしている。
そこで、奈緒が叫ぶ。
奈緒「ひかりィィッ!そこからシュートォッ!」
ひかり「えっ!?」
ひかり、促されるままボールを拾い上げる。
客席(階段)に座る美羽も、ひかりに向かって叫ぶ。
美羽「ひかりぃぃっ!シュートォ!」
高校生A、ボールを奪おうとひかりに向かって突進する。慌ててボールを打ち上げるひかり。
ひかり「わわわぁぁっ!」
キャッチしにかかる高校生の手、僅かに届かず、ボールは見事な放物線を描いてポストに向かう。
奈緒は、手をかざして太陽の反射光を遮りながら、ひかりの打ったボールの行方を目で追い続けていた。
そして、そのボールはリングにも触れずにバスケットを通過したのだった。
ひかりの超ロングシュート成功のありえなさに、全員呆気に取られていたが、ようやく我に返った奈緒、美羽、歓喜を爆発させる。
奈緒「ひかりィィー!」
美羽「ひかりぃぃー!」
茫然と立ち尽くすひかりの手をとってはしゃぐ奈緒と美羽。
奈緒「やったね、ひかり!」
美羽「やっぱひかりは只者じゃないわ!」
状況が飲み込めぬのか、きょとんとしたままのひかり。
ひかり「あ・・?」
奈緒「どうしたの?・・ひかり?」
美羽「嬉しくないの?ひかり?」
奈&美「ひかりぃ!?」
ひかり、感動を噛み締めるように徐々に顔がほころんでいく。
ひかり「ううん・・・嬉しいよ・・とっても」
なおみ〜うも笑顔に溢れる。
奈&美「よかったァ・・」
奈緒「来てよかったね!」
ひかり「ウン!」
ゆとり、すべての話を聞き終えると、クスッと笑う。
奈緒、怪訝そうに、
奈緒「え?そんなおかしな話だった?」
ゆとり、微笑みながら、
ゆとり「ううん。最高にいいお話だったよ。ひかりとのいい話でもあったけど、奈緒と美羽のいい話でもあるよね」
奈緒、ハッとなる。
奈緒「a・・・!」
ゆとり、微笑みながら続ける。
ゆとり「なんだ、やっぱりあなたたち仲いいんじゃん、って思ったら、つい可笑しくなっちゃったのよ!」
奈緒、聞き返すように、
奈緒「アタシと美羽の・・・いい話?」
ゆとり「奈緒は美羽といつも一緒が当たり前だから、その日のことがふたりにとってどれだけ大切な想い出になってるか、今は実感ないだろうけどさ、もしこのまま喧嘩し続けて、二度と一緒に遊べなくなったら、そのお話、すごく悲しい想い出に変っちゃうんじゃない?」
奈緒「え・・・?」
ゆとり「なんてったって、そのときに初めて誘ったひかりのことが今回の原因みたいだし・・・」
奈緒、ゆとりの言葉を理解したように、ハッとなる。
奈緒「あ・・・・・」
ゆとり、積極的な笑顔で、
ゆとり「だぁ〜かぁ〜らぁ〜!」
ゆとり、そう言うと、スックと立ち上がり、机の前まで歩く。
そして、奈緒人形と美羽人形を両手でつかむと、再び奈緒の前まで持って来て、ストンと胡坐をかき、両手で持った人形を突き出すように奈緒に示しながら、
ゆとり「これ持って、今すぐ美羽と仲直りしに行こ!」
奈緒「ha・・・」
ゆとり「ね!」
奈緒、人形たちを数秒間凝視し、目を潤ませた後、ゆとりの顔を見て、
奈緒「今・・・すぐ・・・?」
ゆとり、ニッコリして、
ゆとり「ん!」
ナラクーダ。
ニヒルーザ、洋上を見晴るかしながら、背後のリバーサスに、
ニヒルーザ「ついに、ムージョは時の流れに飲み込まれてしまったようだな」
リバーサス「はい。残念ながら・・・」
ニヒルーザ、ニヒルに笑みながら、言う。
ニヒルーザ「ぐふふ。ちっとも残念ではないわい。こうも簡単に時の流れに屈するような者は、所詮初めからその程度の器よ。シスター・シーズンに敵うべくもないて」
リバーサス「しかも、第4の季節の島・うずきヶ島まで奪い返されてしまいました」
ニヒルーザ「まあ、あと8つもあれば、まだまだ我らに分はあるがな」
リバーサス「しかし、キャプテン・ニヒルーザ、その前に、このナラクーダに時の流れが入り込んで来て、ナラクーダ号が危機に瀕しているのでは・・・」
ニヒルーザ「がはは。船は修復した。その後、この逆時計をフル回転させ、時の流れは何とか駆逐した」
ニヒルーザ、そう言うと、洋上を向いたまま、片手だけ背後に突き出し、リバーサスに逆時計を示す。
リバーサス「さすがキャプテン・ニヒルーザ・・・」
ニヒルーザ「リバーサス・・・」
リバーサス「はっ!」
ニヒルーザ「もはや頼れるのはお前だけだ」
リバーサス「はっ、ありがたきお言葉!」
リバーサス、頭を下げながらも、俄かに声が活気付く。
ニヒルーザ、リバーサスに見えない程度の微かな含み笑いを浮かべる。
ニヒルーザ「ふふん・・・」
そして憤然と向き返り、リバーサスに逆時計を突きつけ、
ニヒルーザ「行け、リバーサス!そして必ずシスター・シーズンを始末しろ。ムージョとは一味違うところを見せてみろい!」
リバーサス、すっかりかしこまり、
リバーサス「は、ははっ!」
ニヒルーザ、深々と頭を下げるリバーサスに再度背を向け、ニヒルな表情で、内心、
ニヒルーザ<ぐふふ。こいつは調子に乗せるに限るて・・・>