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第14話「喧嘩」!(ひかゆと読み上げ)
ベローネ学院女子中等部二年桃組教室内。
昼食時。
ひかり、なおみ〜う、3人で机を寄せ合い、弁当を食べようとしている。
すでになおみ〜うは、それぞれの弁当箱を開けて、食べ出している。
ふたりは、さきほどの体育の授業でのしこりが取れず、お互い顔を合わせないまま、黙々と食べている。
ひかり、カバンの中から弁当箱をゴソゴソ取り出しつつ、その気まずい雰囲気を察し、ふたりを交互にチラチラ見ながらも、何も言えない。
やがてひかりが、後れて弁当箱を開く。
その中身アップ。
たこ焼きとおむすびとハムとナタデココの質素な手弁当。
美羽、それを見つけ、
美羽「あ〜!ひかり、またたこ焼き弁当?」
ひかり、苦笑いを浮かべながら、
ひかり「うん。昨日の夜、遅くまでお店のお手伝いで忙しくて、ちゃんとしたお弁当を作る時間がなかったから、お店の余り物を入れて来たの」
美羽「へえ・・・」
美羽、そう反応すると、徐ろに自分の弁当箱に視線を落とす。
さすが栄養士の母が作る弁当だけあって、なかなか豪勢で、唐揚、ハルサメ、春巻き、焼き魚、玉子焼き、プチトマト、レタス、きゅうり、五目御飯が盛り込まれ、色とりどりである。
ところがそのとき、黙々と弁当を食べていた奈緒が、
奈緒「じゃあ〜、アタシのこれ、あげるよっ!」
と言って、目を瞑ったまま、ひとかけらのハンバーグをひかりの弁当箱の中に入れたのだった。
すると、美羽が、過敏に反応。
美羽「ああっ!わたしが今ひかりに分けてあげようとしてたのに〜!」
美羽、自分の弁当箱の中から箸で唐揚を一個つかみ出し、ひかりの弁当箱に入れる。
美羽「はいっ!」
ひかり、少々困惑顔ながら、無理やり微笑んで、ふたりにそれぞれお礼を言う。
ひかり「あ、ありがとう・・・」
すると、奈緒、一瞬美羽を睨んだ後、また自分の弁当箱の中から、今度はウメボシをつかみ出し、ひかりの弁当箱に入れる。
奈緒「ひかり、これもっ!」
ひかり「え・・・」
美羽「あっ・・・!」
奈緒、美羽を当てこするように平然と、
奈緒「唐揚なんて脂っこいものだけじゃ後味悪いでしょ。さっぱりした漬物もほしいよね」
美羽、それを聞いて当然怒る。
美羽「なによっ!自分だって、油コテコテのハンバーグあげてたじゃない!」
奈緒「油コテコテえ〜!!?」
美羽「ええ、コテコテよッ。それに、奈緒は、自分の嫌いなウメボシをひかりに食べてもらおうとしてるだけでしょ!?」
奈緒、怒って、
奈緒「アタシは嫌いでも、ひかりが好きなんだからいいジャンジャン!?」
美羽、プイッと奈緒から顔を背けた後、また弁当箱を覗き込み、
美羽「そんじゃあ、アタシもこれあげる」
美羽、そう言って、プチトマトを、
美羽「はいッ。はいッ。で、もう〜一つッっと」
連続して3つも、ひかりの弁当箱に入れて行く。
ひかり、自分の弁当箱に食べ物が増えて行くのを、ひたすら困惑顔で見下ろしている。
カメラ、ひかりの背後へとズームイン。
そこには、焼きソバパンをパクつき、もう一方の手に牛乳パックを持ち、かなり心配そうな顔で3人の様子を窺うゆとりの姿があった。。。
ホームルーム後の掃除の時間。ひかり、黙々と教室窓の拭き掃除をしている。
そこへ、なおみ〜うが入って来る。
美羽、ひかりが、ちょうど拭き掃除の手を休め、額の汗を拭っているのを見て、次に、チラッと隣にいる奈緒を睥睨した後、ひかりに近づくと、
美羽「ひかり、たいへんそう。あたしの当番のところ、もう終わったから、手伝ったげるよ」
ひかり、困惑顔で、
ひかり「え、別に大丈夫だけど・・・」
美羽、笑いながら、
美羽「いいから、それ貸して」
そう言って、ひかりの手から窓拭き用雑巾を取り上げる。
ひかり「あっ・・・」
ところがまたそこへ奈緒が割り込み、美羽の手からかなり強引にバッと雑巾を取り上げる。
美羽「あッ!!」
奈緒「貸してごらん。美羽なんかの弱っちい手で拭いても窓の汚れなんて落ちっこないんだから。その点、わたしは運動部で鍛えてるからね」
奈緒、そう言って誇らしげにニヤつき、美羽を横目で見る。
美羽、向きになって、奈緒の手から雑巾を奪いにかかる。
美羽「返してよッ、それっ!アタシがひかりから借りたものなんだからっ」
奈緒も意地になって、雑巾を引っ張る。
奈緒「なによー!美羽じゃ、ひかりの足手まといにしかなんないジャンジャン!」
しばらくお互いに雑巾の端と端を引っ張り合って、綱引き状態。
なおみ〜う「くううう〜〜!!!」
真ん中のひかり、両者を交互に見遣りながら、ただオロオロするだけ。
ひかり「ああ、ふたりとも・・・ああ!」
そこへゆとりが入って来る。
いきなりこの光景を目撃するも、状況が把握できず、ポカンとした顔で問う。
ゆとり「ん?なにしてんの?なんの遊び?」
やがて、ぼろ雑巾の限界か、なおみ〜うによって左右に引っ張られ続けたそれは真ん中からビリビリッと裂け、なおみ〜うは、それぞれの力学的方向へと顛倒する。
美羽「ああ〜っ!」(『金色夜叉』で貫一に蹴倒されたお宮のように、アレ〜ッという感じで両の手を突きながら横倒しになる)
奈緒「いててえっ!」(こちらはまともに尻から落ち、そのお尻をさすりながら)
背後のゆとり、噴き出す。
ゆとり「プッ!どうせやるなら、もっと頑丈な綱とか使いなってえ」
ひかり、慌てて、左右をキョロキョロし、
ひかり「奈緒っ、美羽っ、大丈夫!?」
しかし、ふたりは、ひかりには何も答えず立ち上がり、にらみ合う。
美羽、破れた雑巾を奈緒に突き出し、
美羽「どうしてくれるのよ!あたしはただ、ひかりが大変そうだから手伝おうとしただけなのに、邪魔しに入って来てっ!!」
奈緒「じゃまああ〜!?」
美羽「ええ邪魔よ。あんたの場合は、ひかりに気に入られたかっただけじゃないの!?」
奈緒、当然ムッとなって、
奈緒「それはあんたも同じでしょ!?日ごろひかりの掃除を手伝うことなんかないくせに、今日に限って、わざとらしいんだよ!」
美羽「なんですって!!」
背後のゆとり、なおみ〜うが、互いににじり寄って行くのを見て、やっと事態の意味に気付き、ダダダッと仲裁しに駆け込んで来る。
ゆとり、なおみ〜うの間に割って入って、両手で押し留め、少し焦り気味に、
ゆとり「ちょ、ちょっと!またいつもみたいにジャレてるのかと思ったら、本当に喧嘩してたんだ?どうしたの?いつもあんなに仲いいのに・・・」
なおみ〜う「・・・!」
なおみ〜う、ゆとりに<仲がいい>と言われてハッとなり、相互に気まずそうに視線をそらすと、互いにクルッと背を向け、別々の場所へ行ってしまった。
ゆとり、ひかりに向かって、
ゆとり「ねえ、どうなってんの?今日、あのふたりおかしいよ」
ひかり「え、ええ、そうですね・・・」
ひかり、落ち込んだような表情で俯き加減になる。
それを見たゆとり、気遣うような苦笑を浮かべて、
ゆとり「なに?ひかりのせいじゃないのに、そんな顔してえ」
デラタコカフェに向かっての帰り道。
ゆとり、珍しくひかりと一緒に帰っている。
ゆとりは、隣のひかりが沈み込んで、無言で歩くのをチラッと見ながら、
ゆとり<こんなムードじゃ、放っておけないよね〜。なんて思ってたら、アタシもデラタコまで来ちゃった>
ゆとりがそう心中独白して前方を望むと、そこにはもう公園内のデラタコカフェが見えていた。