・ 目次 / 第13話「海の休日と休日の海」 (前のページ/次のページ) ・
※参考までに………
・タコテンヤ(リンク先はGoogle検索)
3人、防波堤に並んで座って、それぞれ竿を持ち、じっと当たりを待っている。
が、もうだいぶ待っているのに全然釣れず、すでに倦み疲れている感じ。
アカネ「んん〜」
ゆとり、アカネさんに向かって、
ゆとり「やっぱり釣れないですね」
ひかり「確かに潮の流れがないみたいだし」
アカネ「そうなんだよね。もうそろそろ満潮のはずなんだけど、潮が満ちて来ないんだよ。噂どおりだね〜」
アカネさん、そう言いながら、糸を巻き戻す。ギーギーというリール音。巻き上げられたテンヤの上のカニは無傷のまま、足を動かしている。アカネさんは、ちょっとふてた顔に。
アカネ「ふんんー」
ゆとり「そういえば、浪一つ立たないし。海にしては静か過ぎるよね」
アカネさん、立ち上がり、
アカネ「あたし、ちょっと場所変えてみるわ。あっちの岩場あたりはなんか釣れそうだから」(あごでその岩場を指示)
ひかり、一瞬その岩場を「ほおっ」と望んだ後、アカネさんを見上げ、
ひかり「はい」
ゆとりは、ひかりに向かって、
ゆとり「じゃあ、わたしたちは、もう少しここで粘ってみようよ」
ひかり「ええ・・・」
アカネさんが移動した後、ふたりはまた餌を巻き上げたり、投げ込んだりを繰り返す(ひかりはまともに投げられないので、足元あたりへピチャッと落とすだけ)。
セインフとスワンフも出て来て、若干翼を広げ、パタパタ飛んでいる。
セインフ「何も釣れなくても、海は楽しいセイン!」
アホウドリと一緒に飛び回るセインフ。
スワンフ「もうセインフったら、ひかりたちの身の上にもなってなのスワン」
スワンフは、真面目顔でセインフを叱る。
ゆとり、ちょっと不満顔に。
ゆとり「そりゃそうだよね。漁師さんにだって獲れないのに、わたしたちがタコを釣れるわけないよ」
ひかり、苦笑して、
ひかり「でも、万が一ってこともあるし・・・」
ひかりは、意外と粘り強い、というより、のんびりしている。
ゆとり「ひかりは、気が長くていいねえ。アタシもそういう性格になりたいよ」
ひかり、苦笑。
ひかり「ふふ」
そのとき、俄かにふたりの周辺の海面に、潮の流れが戻り出したのである。
ゆとり、それに気づく。
ゆとり「あれ、なんか潮が流れ出したんじゃない?波も少し立って来たし」
波打ち際がピチャピチャ言い出す。
ひかりも、海面を覗き込むようにして、
ひかり「そういえば・・・」
その海面をバチャッと小魚が跳ね、銀鱗がキラッと光る。
ゆとり「あっ!魚だ!」
ゆとりが小魚を見た直後、ひかり、隣で叫ぶ。
ひかり「アッ!」
ゆとり、驚いて、
ゆとり「ど、どうしたの?」
ひかり「なにか、重たいものが!」
ひかりの釣竿がしなって(曲がって)いる。
非力なひかり、腕をグイグイ引っ張られる。
ひかり「ああぁ〜ああぁ!うううん!」
ひかり、目を瞑り、歯を食いしばる。
ゆとり「なんか引っかかってるんだよ!」
ゆとりは、自分の竿をガチャッと置いて立ち上がると、ひかりの背後へ回った。
そして、ひかりの竿を一緒に持って、引っ張るのを助ける。
ひかりとゆとり、しばらく踏ん張り合う。
ひかり&ゆとり「んんんんッ!」
なかなか手ごわい。
ひかり&ゆとり「うううぅぅぅ・・・!!」
ひかゆとの踏ん張りが勝って、やがて海中から何か赤黒いものが見えて来た。
それは、明らかにタコのようだ。
ゆとり「わおッ、アンビリーバブル〜!」
ゆとり、驚き叫ぶ。
そのときふたりはバランスを崩し、「うあああッ〜〜!」と叫んでふたり一緒に後ろへ倒れ込むように尻餅をついた。
すると、その勢いで、ついに<獲物>が大根抜きされるように、海中から飛び出し、ひかりの頭に落ちて来たのである。
<それ>は、ベチャッとひかりのサンバイザーの上に吸い付くように乗っかった。
それは、頭の部分だけで20cmはありそうな良型のマダコだったのである。
ゆとり、ひかりの頭にそれが載っているのを見て、
ゆとり「ひかり、やったー!釣れたじゃな〜い!おめでとー!」
ひかり、頭にタコをつけたまま、苦笑いを浮かべ、
ひかり「あ、ありがとうございますう」
ひかりの頬に、汗だか海水だかが垂れている。
さあ、いろいろと動き出した。
さらに、ゆとりは、自分の置き竿に当たりがあるのに気づき、
ゆとり「あっ!」
と叫んで、急行。
ひかりより力があるゆとりは、独りで一気にごぼう抜き。
ゆとり「ンンッ!やあああ〜あっ!」
ひかりのほど良型ではないが、活きのいいタコが釣れる。
ゆとりは、起用に片手でパシッとタコの頭をつかんで(つまりちょうど手の平サイズ)、ニッコリ、
ゆとり「やりぃ!」
やっとタコを頭から引き離したひかり、両手にタコを持ったまま、ゆとりもタコを釣ったのを見て、安堵の笑みを湛える。
ひかり「haha」
ところがそのときである。また新たな動きが!
海中の一点が異様に大きく盛り上がって来たのだ。
ひかり「ああ、あれは!?」
ゆとり「今度は、どんなオオダコ?」
しかし、それはタコではなかった。
あろうことか、ムージョが現れたのである。
ひかり「ああッ、あの女の人・・・!」
ゆとり「なんとおッ!・・・の?!」
ムージョは、そのまま灯台のてっぺんに着地し、ひかゆとを見下ろしながら、
ムージョ「おっほほほほ!お嬢さん方、その細腕でよくもまあそんなオオダコを釣り上げられましたわね。褒めて差し上げましょう」
ゆとり、不興顔で怒って、
ゆとり「べっ、べつにあなたなんかに褒められても、うれしくもなんともないんだけど?」
ゆとりは、自分が釣ったタコをまだ持っており、それをチラッと見ながら、少し落胆顔で、
ゆとり「しかもアタシのは、オオダコってわけでもないし・・・」
スワンフが、ゆとりを慰める。
スワンフ「でもゆとりのタコは、可愛いのスワン」
ゆとりは、腑抜け顔で、
ゆとり「うん、可愛いよね、この子。ははは」
ムージョ、バカにしたように、
ムージョ「ふん」
セインフがそれを察して、キッとなり、
セインフ「海の異変は、きっとこいつらの仕業だセイン!」
ひかりはセインフの言葉を受けて、恐る恐る問い詰めるような勢いで、
ひかり「あの・・・あなたたちが、潮の動きを止めていたというのは、本当ですか・・・?」
ムージョ「お〜っほほほほ!さすがですわね。もうお気づきでしたか?」
ひかり「ha!」
ムージョ「そのとおり、すべてはこのわたくしめムージョが、海から一切の時の流れを奪い取ったために起こったことですわ」
ゆとり「やっぱり!」
ゆとり、俄かに怒りの表情に変わって、ギュッと握りこぶしを作る。
ひかりは、訴えるような目で、悲しそうに、
ひかり「なぜ、そんな悪いことをするんですか?」
ムージョ、ここぞとばかり、脅迫的な声音になり、
ムージョ「シスター・シーズンをおびき出すためですわッ!」
ゆとり「ん・・・またッ・・・!」
ムージョの挑発に、ゆとりが素早く反応し、キッとなって、つぶやいた。