・ 目次 / 第13話「海の休日と休日の海」 (前のページ/次のページ) ・
ナラクーダ。
船の甲板上にて。
ニヒルーザ、洋上を眺めていたが、矢庭に振り向いて、
ニヒルーザ「リバーサス、ムージョが面白いことをしているそうだな」
リバーサス、後ろに控え、やや頭を下げながら、
リバーサス「はい。ときびとの庭の海から時の流れを奪い、シスター・シーズンが現れるのを待つ構えのようにございます」
ニヒルーザ「グフフ、ムージョのやつめ、今度ばかりはよく考えたな」
リバーサス「は」
ニヒルーザ「ときびとの庭の海も、もともとはこのナラクーダの海と同じく、時の流れを持たず、潮の満ち干きもなければ、生き物も存在しなかった。それらを与えた張本人は、あのシスター・シーズン」
ニヒルーザ、再び海上へ向き直す。両腕は後ろ手にしており、右手には握り締めた逆時計が映る。すごい勢いで激しくギュルルーンと逆回転し始める。
ニヒルーザ「そのときびとの庭の海の動きを止められたとあっては、シスター・シーズンもじっとしてはいられまい」
リバーサス「すると、遅かれ早かれ、シスター・シーズンは・・・」
ニヒルーザ「うむ。ムージョの妨害を止めに現れるだろう。しかし・・・そのときがシスター・シーズン自身の時の終わり。グフフフ」
ニヒルーザの手にした逆時計アップ。激しくグルグル左回転していたが、或る時点で、ピタッと止まる。
それを見たリバーサス、無言で驚く。
リバーサス<おおっ!>
デラタコカフェ。
ひかり、ビーグル内の調理場で、キャベツをトントンと刻んでいる。
そこへゆとり、スワンフを持って顔を覗かせる。
ゆとり「ひかりっ!」
ひかり、包丁を持ったまま振り返る。
ひかり「あ、こんにちは・・・」
ゆとり「今日もアカネさんいないの?」
ひかり「ええ、やっぱりタコを仕入れに出かけてて」
ゆとり「そのことなんだけどさあ・・・」
いつしかひかりとゆとり、テーブル席に腰掛けている。
ひかり「え、じゃあ、スワンフは、あの海の異変が、あの人たちのせいじゃないかって言うの?」
透明な羽衣を羽織ったスワンフ、テーブルの上にいる。
スワンフ「はっきり断言は出来ないのスワン。だけど、そんな感じがするのスワン」
そのとき、ひかりのポーチからセインフも現れ、
セインフ「セインフもそう感じるセイン。僕らは時の従者だから、時の流れに関係するものの異変には敏感なんだセイン。しかも、時の流れを乱せるのは、ナラクーダしかいないセイン」
ゆとり、ひかりを見つめて、
ゆとり「ひかりっ・・・」
ひかり「え、ええ・・・」
互いに深刻そうに目で相槌を打ち合う。
そのとき、アカネさんが、戻って来る。セインフとスワンフ、慌ててポーチに戻る。
アカネ「ただいま。ふう・・・」(ちょっと落ち込んだ様子)
ひかり、その重い空気を察し、
ひかり「アカネ・・・さん?」
と声をかけるのがやっと。
しかし、アカネさん、一瞬目を瞑(つむ)った後、顔を上げるや、空(から)元気のようなニッカとした笑みを浮かべ、
アカネ「ひかり、明日、店閉めるよ!」
ひかりは、アカネさんとは正反対に、深刻そのものの不安顔に豹変し、
ひかり「え!?それって、まさか・・・」
アカネさん、ひかりの杞憂症とオーバーリアクションに苦笑いしながら、
アカネ「な〜に心配してんの。店をやめるんじゃないよ。こうなったら最後の手段」
ひかり「最後の・・?」
ゆとり「しゅ・・だん?」
アカネ「知り合いの漁師さんに教えてもらったタコ釣りの穴場があるんだよ。ちょっと遠いし、電車が通らない辺鄙な場所だから、この車で行くしかないんで店は休むけど、あたしは諦めないよ」
ゆとり、快活そうな笑顔になり、
ゆとり「アカネさん、すごい!そうですよね。自分の足を使って直接タコの足をゲットしに行けばいいんですよね」
アカネさん、ゆとりのシャレに笑いながら、
アカネ「ははは。そう。ビーグルなら足代もあんまりかからないしね」
ゆとり、パチンと両手を叩いて、アカネさんを指差し、
ゆとり「うまいっ!」
ひかり、ついて行けず汗かきながら苦笑ぎみに、
ひかり「はは」
アカネ「釣りは、早朝の日の出前後が勝負だよ。そんなわけだから、今日はもう切り上げて、明日に備えて早めに寝るよ。(ひかりに向かって)ひかり、いい?」
ひかり「えっ!わたしも行くんですか?」
アカネ「明日ちょうど日曜日だしさあ、今後またこういうことが起こらないとも限らないんだから、あんたにも非常手段を知っといてほしんだよ」
アカネさん、そう言うと、片付けにかかるため、そそくさとビーグル内に入って行く。
ゆとり、呆然とアカネさんのほうを見ているひかりに対して声をかける。
ゆとり「ひかり、面白そうじゃん」
ひかり、振り向いて苦笑いしつつ、
ひかり「そ、そうですか?」
ゆとり、果敢な感じの笑顔で、
ゆとり「ねえ、ひかり。アタシも行っていいかな?」
ひかり、ちょっと驚いて、
ひかり「えっ!・・・それは・・・アカネさんに聞いてみないと・・・」
ゆとり、俄かに不機嫌な表情になり、
ゆとり「なんでアカネさんなんだよ!ひかりはどう思ってるの?!」
ひかり「え?」
ゆとり「あたしが一緒に行くのはいやなの?いやじゃないの?」
ひかり、ドギマギして、
ひかり「え・・・い、いやじゃないけど・・・」
ゆとり、睨むように、
ゆとり「じゃあ、行ってもいいんだね?」
ひかり、気圧され、
ひかり「え、ええ。一緒に、、、行きましょ・・・」
ゆとり、スウッと笑顔に戻り、
ゆとり「よし決まりぃ!じゃ、明日早いし、アタシ、帰るね」
ゆとり、ガタッと席から立ち上がる。
・・・
シーンジャンプ。
ゆとり「ばいば〜い」
ひかり、ゆとりが手を振って帰って行くのを、夕陽に照らされながら、黙って見送っている。
ひかり「・・・」