・ 目次 / 第12話「ほのかの誕生日」・5 (前のページ/次のページ) ・
背後のムージョ、高らかに笑う。
ムージョ「おほほほほ!消えてしまった時間は、ちょっと表面をなぞったくらいじゃ元には戻らないってことですわ」
ルミナス「じゃあ、なぜマジックを・・」
ラピッド「もしかして、わたしたちをからかったの!?」
ムージョ「どうお考えになろうとご自由に。ともかく、これではっきりしたのは、消えた日を復活させるのは、普通の方法では不可能ということ・・・」
ルミナス「じゃあ、どうすれば・・・」
ムージョ「それはあなた方が一番よくご存知なんじゃないですこと?」
ルミナス「えっ?」
ムージョ「失われた時を回復させられるのは、この世でただひとり・・・」
ルミナス&ラピッド、固唾を呑んで、ムージョの次のセリフを待つ。
ルミナス&ラピッド「ンッ・・・」
ムージョ「時の主・シスター・シーズンだけ・・・」
ラピッド、ドキッとする。
ラピッド「あっ」
ムージョ「わたくしの勘では、あなた方おふたりのうち、どちらかがシスター・シーズンじゃないかと思うのですけど?」
ルミナス「えっ!?」
ルミナス、驚いたのち、チラッとラピッドのほうを気まずそうに盗み見る。
ラピッドは、キッと眉を怒らせたまま、ムージョを睨みつけている。
ルミナス<ラピッド・・・>
ムージョ「あらあら。図星を突かれたからって逆恨みされても困りますわ。もし、そうなら、今すぐ正体を明かしたらどうですか?どっちにしても、シスター・シーズンでないと、あの消えた日付は元には戻せませんしねえ」
ラピッド、やけに向きになって、
ラピッド「し、知らないわよ!」
ムージョ「ほォ?」
ラピッド「わたしは早瀬ゆとり!そしてこの子は(ルミナスを指差しながら)、九条ひかり!それ以上でも以下でもないのッ!」
ルミナス、やや心配げにラピッドを見つめて、
ルミナス「ラピッド・・・」
ムージョ、少々いまいましげに、
ムージョ「ならば、イヤでも正体を見させていただきますわ。ムカツキー!やっておしまいなさい!」
ムカツキー「ムカツキー!」
ムカツキー、両腕にググッと力を込めると、たこ焼き用鉄板の胴体部分がメラメラと焼け始める。
どんどん加熱され、30個のたこ焼き弾が赤く灼熱し始める。
危機を感じたルミナスとラピッド、無言の合図で、両手をつなぎ、必殺技の構えに入る。
ルミナス「光る時、かける(×)」
ラピッド「走る時、イコール(=)」
ルミナス&ラピッド「プリキュア・アストラル・トルネードオオ!!」
超音波のような渦巻状の閃光がルミナス&ラピッドの全身から発せられ、原爆のようにゆっくりと広がって行く。
アストラル・トルネードは、時の流れの重みを原動力にしている。
時の流れに逆らうナラクーダの者たちには、最も効果的な斥力を持つ。
ムカツキーも同時に、ドンッドンッと、赤い炎と化したたこ焼き弾を発射し出したが、アストラル・トルネードの前に、ただのパチンコ玉同然に弾き返され、全く無力無効。
やがてトルネードは、ムカツキー本体を襲う。ムカツキーも踏ん張るが、プリキュアのふたりの気合の入れ方は、いつもの比ではない。
ルミナス「ほのかさんの誕生日はッ くッ・・・わたしたちが、くッ、守りますううッ!」
ラピッド「そうッ!シスター・シーズンとかってひとの力を借りなくても、わたしたちにだって出来るはずっ!・・・うううっ」
背後のなぎさ、
なぎさ「ルミナス、ラピッド、しっかり!!」
ラピッド「なぎささんのため・・・くッ」
ルミナス「ほのかさんのため・・・んんん」
ルミナス&ラピッド、一歩前へ踏み出し、
ルミナス&ラピッド「ぇやああっ!」
パワーが倍加されたトルネードがムカツキーの抵抗を上回り、ムカツキーの炎が鎮火し始める。
と同時に、4月4日の暦のところに、徐々に「4」の字が浮かび出した。
ムージョ「なんと・・・!!」
ムージョ、プリキュアが、シスター・シーズンの力を借りずに、失われた日を回復してしまったことに動揺する。
そして、ムージョは、シスター・シーズンの正体を見るという目的を今回は果たせそうにないと判断するや、ムカツキーの顛末を見届けることなく、さっさと飛び去って行ったのであった。
ムージョ「ふんっ!」
一方、ムカツキーはもはや爆破寸前。
ルミナス&ラピッド「はあッ!」
ムカツキー「ムカツキイイイイ!」
ボムという爆破音とともにムカツキー粉砕。
大量のオチツキーが中空を移動して行く。
オチツキー「オチツキ~ヤ、オチツキ~ヤ」
ルミナスとラピッド、互いに見つめ合って、笑む。
ルミナス&ラピッド「ふ・・」
そして、ふたり同時に後ろのなぎさのほうへ振り向き、やはり笑む。
なぎさもそれに答えて、笑みを浮かべる。
若葉台郵便局にて。
なぎさ、国際便小包の手続き。
ことの成り行き上、ひかりとゆとりも付き添っている。
なぎさ、さっそくトラブル顔で、あたふたと、
なぎさ「ああ~ん、なにこれ? 住所書く順番が日本と正反対にひっくり返ってて、わけわかんないよ~。しかも、フランス語のスペル、全然わかんないし。なに? A・V・N・E、あぶね? なにが危ないのよ~!」
最後は自棄になって、ほのかの住所の載った自分の手帳に向かって怒鳴っている。
ゆとり、苦笑いしながら、
ゆとり「それ、アブニュー(通り)、A・V・E・N・U・Eですよ。先輩、アタシが代わりに書いてあげますよ」
ゆとり、そう言ってなぎさからペンを取り上げると、スラスラとほのかの住所を仏語を交え、書き込んで行く。非常に綺麗なアルファべットイタリック体。
ひかり、驚嘆して、
ひかり「ゆとり・・・さん。すごい・・ですね」
なぎさ「国際郵便使った経験あるの?」
ゆとり「いいえ。ないですよ。ないけど、なぜか普通に書けちゃう。なんでだろ。てへ」
ゆとり、お茶目に舌を出して笑う。
3人、すでに郵便局を後にし、並んで往来を歩いている。
なぎさ、メモの紙を見ながら、
なぎさ「紅しょうがに、テンカスに、鰹節に、昆布だしに、青海苔・・・傷まない素材はちゃんと全部入れたよね・・・」
ひかり「たこ焼き用の鉄板は、アカネさんがプレゼントしてくれて、助かりまたよね」
なぎさ「そうそう。あれがないと丸っこいのが作れないからね」
ゆとり、いたずらっぽく、
ゆとり「あのくぼみがあっても、なぎさ先輩は、ついにまあるいたこ焼きを作れませんでしたけどねー」
なぎさ、不興顔で、
なぎさ「あっ! 仕方ないじゃん。時間制限があったんだから」
ひかり、微笑みながら、
ひかり「でも、最後の頃は、楕円形のやサイコロみたいなのは作れるようになってましたよ」
なぎさ、ひかりの変なフォローにどうリアクションしてよいやらわからず、
なぎさ「えっ? はは。そ、そうだね・・・」
ひかり、なぎさの複雑な反応に気づかず、全くイノセントに、
ひかり「あと3日あれば、まん丸のたこ焼きが作れるようになってたかも」
ゆとり、怪訝な顔で、
ゆとり「でも、なぎささん、どんなレシピを書いて送ったんですか?自分じゃ完成品作れなかったのに・・・」
なぎさ「ん? えっとね。『たこ焼きを作るとき一番大事なのは、自分の作ったたこ焼きを食べてもらいたいひとの姿をずっと思い描きながら焼くことです』」
ゆとり「ふんふん」
ゆとり、目を瞑って、結構感心しながら聞く。
なぎさ「・・・以上」
ゆとり「ふんふん。なるほど・・・って、え~それだけ?」
なぎさ、笑顔で、
なぎさ「そう。それだけ」
ゆとり、顔をしかめて、
ゆとり「そんなので参考になりますか?」
なぎさ「ははは。実は調理法とか最後までよく覚えられなかったから、結局ひかりに全部書いてもらっちゃってさ。ね、ひかり」
ひかり「はいっ」(笑顔で)
ゆとり「でも、それじゃあ『心のこもった、ビギナーによるビギナーのためのレシピ』にならないんじゃないですか?」
なぎさ「さあ、どうだろうねえ。少なくともアタシにとっては、今までいつも食べるだけのものだったたこ焼きが、誰か大切な友だちに食べてもらうためのものに変ったってだけで、まるで見方が変ったし、作るのだって、失敗してもめげずに最後までやり遂げられそうな気がしたのは、大きな発見だし進歩だったなあ」
ひかり、しばらく思案顔でなぎさの話を聞いていたが、顔を上げ、少し自信ありげに笑んで、
ひかり「きっと・・ううん、絶対・・・」
なぎさ&ゆとり「え?」(ともにひかりのほうへ振り返る)
ひかり「絶対ほのかさんになら、なぎささんの気持ちは伝わると思います」
ゆとり、真顔に変って、
ゆとり「ひかり・・・。そう、そうだよね。なぎささんの書いたことって、結構大事なことかもしれないね」
ひかり、莞爾と笑んで、短く切るようにうなずく。
ひかり「えぇっ」
なぎさ、自信を回復し、空を見上げ、
なぎさ「ああ、早くほのかに届くといいなあ」
ひかりとゆとりも空に顔を上げる。
ゆとり「ホント」
ひかり「そうですねえ・・・」
偶然、飛行機雲を引き伸ばしながら上空を横切る飛行機が映る。
ゆとり「ひかり、デラタコカフェからたこ焼きが消えちゃうってホント!?」
ひかり「ええ、最近タコさんもお魚も全然取れなくなったらしくて」
ゆとり「じゃあいよいよデラタコカフェも名前を変えなくちゃね」
ひかり「ですねー。どんな名前にしましょう?デラ、デラ・・・」
ゆとり「あ~あ、ここはひかりが深刻ぶって『そんなこと言ってる場合じゃありません!』とかってアタシのお気楽ギャグに突っ込み入れなきゃいけない流れなのにー。流れ読んでよ、流れ」
ひかり「そう! 流れがないんです!」
ゆとり「な、流れが読めない・・・」
ひかゆと「ふたりはプリキュア ミルキーウェイ! 第13話「海の休日と休日の海」」
ゆとり「ひかりのばやい、流れがないんじゃなくって、流れはあるけど、ひかりがうまく乗れないんでしょ?」
ひかり「いえ、本当に流れがないんです。潮の流れ」
ゆとり「へ?何の話?」
ひかり「だから、海からタコさんが消えちゃった話・・・」
ゆとり「完全に話の流れ無視してる」
ひかり「あ、いい名前思いつきました! デラ・・・」
ゆとり「はいっ!ここでこのグルグル堂々巡りの流れカーットオオ!」
またみてね!
著:ヒカルミの世界 / 絵:ヒカルミの世界・ラピー・shimizu_piecelot / 編:ライネス