・ 目次 / 第12話「ほのかの誕生日」・1 (前のページ/次のページ) ・
ナラクーダ。
幽霊船甲板上にて、ニヒルーザ、長い筒状の望遠鏡で遠方を望んでいる。
後ろに、リバーサスとムージョが控える。
ニヒルーザ「う~ん、どんなに倍率を上げても、ちり一粒映らん・・・ひたすら、虚無、あるのみ・・・」
ムージョ、少し失笑気味に、
ムージョ「ふっ、キャプテン・ニヒルーザ、なんてお茶目なんでしょう。ここはナラクーダの海ですわよ」
ニヒルーザ、ピクッとして、顔半分だけ後ろへ返し、少々いらだち気味に、
ニヒルーザ「ええい、わかっておるわ! 何かが映っていたら大変ゆえ、念のため観察してみたまで」
ムージョ、はっとなって、
ムージョ「あっ、これは失礼いたしました。キャプテン・ニヒルーザの深いお考えを読み取れませんで・・・」(頭を下げる)
ニヒルーザ「まあよい。それで、ムージョ、さっそく伝説の戦士どもを討ち損じたそうだな」
ムージョ、その話題を出され、少し悔しそうに顔を背ける。
ムージョ「くッ・・・」
それを見たリバーサス、無表情に、
リバーサス「大口を叩いていたわりには、そのざまか」
ムージョ、ふて腐れた表情でダンマリを決め込む。
ムージョ「・・・」
ニヒルーザ、ボスらしく、ニヒルな笑い声とともに、リバーサスに
ニヒルーザ「グフフ、まあ、そう責めるな。お前もシスター・シーズンを取り逃してばかりいるのだ」
リバーサス「そ、それは・・・」
リバーサスも焦り顔に。
ニヒルーザ「ともかく、やつらのうちの一人が、シスター・シーズン本人なのかどうかを突き止めることが今は先決。それだけでもはっきりさせられれば、大手柄とするか」
リバーサス「では、今回は、またこのリバーサスが・・・」
リバーサスがそう言いかけた瞬間、ムージョが、
ムージョ「フアッ!」
気合の声をかけ、手柄を独り占めしようと、すばやく飛び立って行った。
リバーサス、ムージョの消えた後を見つめ、無表情を保ちながらも呆れたように、
リバーサス「ムージョのやつ・・・」
他方、ニヒルーザは、何も言わず、再び海のほうへ向き直り、望遠鏡を目に当て、「虚無の観察」に戻る。
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雪城邸。
ゆとり、ベッドの上で昼寝の最中。
ゆとり「スウウウ~ハアア~(~o~)」
と寝息を立てている。
そこへゆとりの懐から、ボンッと、透明な衣をまとったスワンフが現れ、いびきをかくゆとりを見ながら、
スワンフ「んん~、不思議なのスワン。いくらゆとりがキュアラピッドに変身できるからって、普段はまだこんな無邪気な子供なのにスワンんん・・」
ゆとりのその無邪気な寝顔、アップで映る。
ゆとり「す~は~(~o~)」
スワンフ「でも・・ゆとりが、シスター・シーズンにしか出来ないはずの時の流れの調整を行ったことは間違いないのスワン」
スワンフがそう言うと、第10話、ミルキーウェイシップ甲板上で、ラピッドが旋回し、下界の時間が夜中から昼へと戻って行くシーン、再び回想される。
(ラピッドは・・・・・・スタッとデッキに着地すると、やおら片足を上げ、天に向かって顔を上げるや、右手を顔にかざすようにして、光ったまま左回り(時計の逆回り)にスピンを始めたのである。第10話「アニメスタジオ見学」より)
スワンフ「あれは・・・んん~・・・」
スワンフ、一人悩み顔。
そのとき、スワンフの背後、障子戸の向こうの廊下から、さなえさんの声が。
さなえ「ゆとりさん?」
スワンフ「あ! ぁっ、ぁっ・・・!」
スワンフ、声を殺してあたふたしながらも、目覚めないゆとりを心配し、
スワンフ「ああ~、どうしようかしらスワン」
スワンフ、障子の向こうのさなえさんの影と、ベッド上のゆとりの寝顔を、右へ左へとキョロキョロ見比べているうち、ハッとなる。
スワンフ「・・・そうなのスワン!」
スワンフ、そう言うと、ゆとりの耳元で、
スワンフ「ゆとりさん、おやつの時間ですよスワン」(さなえさんの真似)
ゆとり、ピクッとなり、寝ぼけ眼(まなこ)のまま、
ゆとり「ンぁ?」
スワンフ、しめしめとほくそえんで、続ける。
スワンフ「ふふふ。今日のおやつは、えっとお・・・、そう! 抹茶プリンですよスワン」
ゆとり、目をパッと見開いて、
ゆとり「え? 抹茶プリンッ!セ・シ・ボーン!トレ・ビヤ~ン!」
ゆとりが、そう叫ぶと同時に、スワンフ、ボンッ!とコミューン時計に変わり、ヒュイッとゆとりの懐に潜り込む。
ゆとりはすっかり目覚め、ベッドから跳ね起きる。
すると、障子戸の向こうから、再びさなえさんの声。
さなえ「ゆとりさん、開けてくれますか?」
ゆとり、嬉々となって、
ゆとり「は~い!」
ゆとりが走り込むようにやって来て、障子戸を開けると、さなえさんが、両手にお盆を持ち、その上になるほどオヤツ類を載せていた。
さなえさん、微笑んで、
さなえ「お昼のおやつに、葛餅と抹茶はどうですか?」
ゆとり、意外の感に打たれた顔に変わって、
ゆとり「あれっ? 抹茶・・・? 抹茶プリンじゃなくて?」
さなえ「あら、抹茶は抹茶でも、抹茶プリンのほうがよかったかしら?」
ゆとり「いええ~、葛餅と抹茶でもいいんだけど、あれ、おかしいな。確かに抹茶プリンって聞いたような・・・」
ゆとり、訝り顔で頭の整理。でもまとまらない。
スワンフ「キャハ・・・!我ながらすごい勘のよさなのスワン。半分当たってたのスワン。クスクス」
スワンフは、ゆとりの懐の中で、お茶目にほくそ笑んで密かに自画自賛していた。
第2幕の続き。
時間が少し飛んで、同じゆとりの部屋にて、ゆとりとさなえさんが対座しているシチュエーションから。
まず、抹茶立てのシーンが詳しく描かれる。
畳の上に葛餅が置かれ、その横で、抹茶を立てるさなえさんの手先のみ映る。
茶碗に湯をコポコポと注ぎ、茶筅(せん)でシャカシャカッと混ぜたあと、その湯をチョロチョロと捨て、茶巾(きん)で内側を拭く。
次に、茶杓(しゃく)で抹茶の粉末を少量掬(すく)って茶碗に入れ、またお湯をコポコポと注いだあと、再び茶筅で混ぜ出す。
ここで、その前に正座させられたゆとりが映る。慣れぬ正座をさせられ、一応両手を膝上に乗せているが、かなりぎこちなく、首を竦めるような格好で、両肩が突っ張っている。
足も痺れ出して、不快げな顔。
ゆとり「ん、ぃッ・・・」
ゆとり、いよいよ顔をしかめ、心の中で、
ゆとり<ヒイッ。ビリビリ来ちゃう。もうダメッ~!>
と、その不快が極まったころ、さなえさんが、涼しい顔で、
さなえ「さっ、出来ましたよ。召し上がれ」
ゆとり、やっと出来た~といった感じで、ほっと一息。
ゆとり「はあああ~」
そして、茶碗に手を伸ばそうとしたが、その瞬間、畳の上にドタッと顛倒。
さなえさん、ちょっと驚いて、
さなえ「ゆとりさん!だいじょうぶですか・・!?」
ゆとり、倒れたまま苦笑しながら、
ゆとり「だ、だいじょうぶ。ちょと、足がしびれただけ」
そう言って、しびれた足を擦(さす)ろうとして触ると、
ゆとり「ひえッ!来るゥ~!」
また顔をしかめたゆとり。
さなえさん、笑う。
さなえ「まあ。ほほほ」
続き。
ゆとり、やっと足のしびれも収まり、再度片手を伸ばし、茶碗をつかみ上げ、
ゆとり「いただきまーす」(今度はリラックスの笑顔で)
しかしさなえさん、すかさずゆとりを制止する。
さなえ「あらあら、ゆとりさん、お茶はこうして飲むんですよ」
そう言って、両手のひらで添えるポーズをしてみせる。
ゆとり「えー?こうですか?」
ゆとり、見よう見まねで持ち替えてみる。
さなえさん、笑んで、
さなえ「そうそう」
ゆとり、真っ当な飲み方で、茶をズズッと一飲みした後、
ゆとり「おいしい・・・でも、さなえおばあちゃん、日本人ていろいろ面倒なことを考え出しますね。ただお茶を飲むだけでも、こんなにいろんなルールがあって」
さなえ「確かにそうですね」
ゆとり、茶碗を両手で支えながら、机の上のほのかの写真をじっと見る。
数秒後、さなえさんのほうへ向き直って、
ゆとり「さなえおばあちゃんは、ほのかさんにも、食事とかのいろんな作法をこうやって教えてあげたんですか?」
さなえ「そうですねえ・・・主に小学生のころですけど」
ゆとり「小学生のころに!?」
ゆとり、ちょっと驚いて、
その後、しみじみと、
ゆとり「あ~あ、ほのかさん、今頃フランスで、日本の窮屈な食習慣なんかすっかり忘れて、清々してるんじゃないかなあ」
さなえ「それはどうでしょうね。三つ子の魂百までって言いますしね」
さなえさん、そう答えると、少し間を置き、はっとしたような仕草を見せて語を継ぐ。
さなえ「ああ・・・それはそうと、ほのかから連絡が来ましたよ」
ゆとり「え?」