・ 目次 / 第11話「盗まれた想い出」・5 (前のページ/次のページ) ・
戦闘開始。
ムージョ、手刀でふたりを襲う。
ムージョ「はあっ! はっ!」
ルミナスは、両手を下げたまま、身を躱すだけでこれをよける。ラピッドから光速のパワーを分け与えられたルミナスは、もはやさきほどのひかりとは別人のような動きを見せている。
ルミナス「はっ、はあッ!」
ムージョ「むん! むうッ!」
ムージョの手刀が、ヒューヒューと空を切り、ルミナスの髪が揺れる。
ルミナスには余裕さえ感じられる。
一方ラピッドは、ムージョの手刀を肘でガードし、ガチンガチンと刀と刀の鍔迫り合いのようになる。肘と肘がクロスに衝突し、両者一歩も引かず、歯を食いしばり、必死の形相。
ラピッド「クウウッ!」
ムージョ「むッ!」
やがて、ルミナスは、ムージョが脳天カチ割りのように振り下ろして来た手刀を、真剣白刃取りのように、両手で華麗にパシッと受け止める。
ルミナス「はいいっ!」
ムージョ「んん・・・!」
ムージョ、コシャクな、といった風に顔を歪め、
ムージョ「ふんんっ!!」
と、ルミナスに鉄槌を食わせるように、手刀をさらに食い込ませ、ルミナスの白刃取りを突破しようとするが、ルミナスも踏ん張る。
ルミナス「ン・ン・ンッ!」
遠方で戦いを見ているなぎさの手にも力が入る。なぎさ、手をギュッと握り締めて、
なぎさ「ルミナス! がんばって!!」
なぎさの後援に勇気百倍のルミナスは、ついに、
ルミナス「ンン! やあああッ!」
そのまま両手でムージョの手首をひねって、宙へ投げ飛ばした。
なぎさ、両手をグーにして胸元に当て、
なぎさ「やったッ!」
向こうへ飛ばされたムージョは、かろうじて転ばずに着地するが、まだ片足しかついていない<おっとっと>の上体(状態)。
ムージョ「これはしたり・・・」
そこへ、ラピッドが全力疾走して駆け込んで来た。
ラピッド「とりゃああああ!!」
ムージョ「むッ!? なんですって!?」
ムージョが、ラピッドの突進に気づいたときには、もうラピッドは目の前まで来ていた。
そしてラピッド、胸元で両手の平を結んだまま一回転すると、その勢いを駆って、ムージョの胸にグムと肘鉄砲を喰らわす。
ラピッド「ヤアッ!」
ムージョ「むオオオオオ!」
ムージョ、ズザーッと背中から地面を滑って行く。
なぎさ「ラピッド、ナイス!」
ムージョは土にまみれながら立ち上がり、
ムージョ「ほほほ・・・お強いお嬢さんたちですこと」
と零して、不敵にフッと笑むと、矢庭に両手を天に向けて広げて叫んだのだった。
ムージョ「ムカツキー、おいでなさいッ!」
ムージョは、ついにムカツキーを召喚したのである。
すると、空間の或る部分がバリンと割れ、不気味な旋回が起こると、写真アルバムタイプのムカツキーが出現し、プリキュアの前に立ち塞がる。
ムカツキー「ムカツキー!!」
ラピッド、ムカツキーの姿を目の当たりにすると、ちょっと変顔になって、ルミナスに、
ラピッド「ねえ・・・これって、何ムカツキー?」
ルミナスは、真顔で、
ルミナス「アルバム、みたいですね・・・」
ムカツキーの胴体に、『おもいであるばむ』と、小学生が書いたような平仮名文字列が浮かんでいるため、それは簡単にわかることだった。
ムージョ、少し離れたところから、不敵に笑って、
ムージョ「おほほほほっ。そのとおりですわ。この中に、あの!お嬢さんの失われた思い出が挿み込まれていますのよ」
ムージョは、「あの!」と言ったとき、向こうのなぎさのほうをザシッと指差した。
なぎさ「えええ!?」
ラピッド「うそお!?」
ルミナス「そ、それじゃあ手を出せない・・」
なぎさ、怒りながら、
なぎさ「ちょっとお、アタシの大切な想い出を、勝手にそんなセンスゼロのアルバムに入れないでよお!」
センスゼロの滑稽なアルバムムカツキーのアップ。
ムカツキー「ムカツキー!!」
なぜなぎさがセンスゼロと言ったかというと、『おもいであるばむ』という小学生のような文字もさることながら、さらにその下に、やはり小学生が描いたような女の子の下手なイラストが写っていたからである。しかし、その絵は、なんとなく、なぎさが描く絵に似ていなくもなかったのだが・・・
ルミナスは内心、
ルミナス<あ、あの絵は、なぎささんの・・・?>
だが、ルミナスがそのことを言わずにいると、ラピッドが怒って、
ラピッド「なぎささんが、あんな下手っぴいな絵を描くはずがなーい! 早く想い出を持ち主に返しなさーい!」
なぎさ、ちょっと変顔になって、
なぎさ「ラピッド、ありがと・・・はは」
ムカツキー「ムカツキー!!」
しかし、なぎさ、唸るムカツキーを見ると、再び怒りの表情で、
なぎさ「そうよ! アタシの想い出のアルバムはもっとプリティーでキュアキュアなのよおお!」
と、そのときなぎさの頭に閃光がよぎるように、或る記憶が蘇る。
なぎさ「あっ・・・!」
ここから、なぎさの脳裡に徐々に想い出が蘇って行くのである。
<今いる同じ河川敷にて。
なぎさとほのかが並んで座り、さらにメップル・ミップルもいる。なぎほのは、MH時、春用の普段着である。
ほのか、寂しそうに、
ほのか「そうなんだ・・・やっぱり帰っちゃうんだ・・・」
ミップル「ほのか、ずっと一緒にいたいけど、わたしたちがいないと光の園は守れないミポ」
なぎさも、シュンと俯いて、
なぎさ「そうだよね・・」
メップル「クイーンは、もうしばらくこっちにいてもいいって言ってくれたけど、僕は選ばれし勇者、ミップルは希望の姫君メポ。光の園を守って行かなくちゃならないメポ」
なぎさ「ポルンとルルンはどうするんだろ・・・」
ミップルが語る。
ミップル「わたしたちと一緒に帰るつもりミポ」
ほのか「そう・・・でもひかりさんは、それでいいのかしら」
ミップル「もちろん、お別れしたくないミポ。でも、特にルルンは、ひかりがもうクイーンになれない代わりに、光の園でクイーンの跡を継ぐのが務めミポ」
ほのか、ハッと合点したように、
ほのか「あ・・・」
今度はメップルが語を継ぐ。
メップル「でも、ルルンはポルンと一緒じゃないといやだって駄々を捏ねるから、ひかりが、ポルンも一緒に帰すことに決めたメポ」
なぎさ、寂しい表情の中にも、ちょっと感心したような驚きの反応を浮かべ、
なぎさ「へええ、ひかりは、こういうとき強いね・・・」
そのときほのかが、ガサッと土手の上に急に立ち上がった。
ほのか「わたしも決めたわ!」
なぎさ、ほのかを見上げ、
なぎさ「ほのかぁ・・・?」
ほのか「わたし、両親のもとへ行くわ」
なぎさ「えっ!」
ほのか「みんな前に進まなきゃいけないのよ。メップルもミップルもポルンも、そしてあの幼いルルンでさえ、みんなの未来を守るために大きな決断をしたのよ。わたしだけが、いつまでも立ち止まってちゃいけないんだわ」
ほのか、キリッとした眉毛で、河原の向こうを見晴るかす。空を見上げているようでもある。
なぎさ「あ・・・」
なぎさも、一瞬目を潤ませたあと、フッと笑顔になり、スクッと立ち上がる。
そして、ほのかに、
なぎさ「ほのかっ、行っといで」
ほのか「え・・・」
ほのかも、なぎさを見て、しばらく無表情だったが、やがて笑みを浮かべ、
ほのか「うんっ!」
場面変って、なぎほの、メップルらとのお別れの瞬間。やはりこの河川敷。
ひかりも来ている。
ルルンが光を発する。
ルルン「るる~!」
すると、それがシャーッと輪になり、その中にだんだんと影が浮かぶ。
それは、石の番人・ウィズダムであった。
番人「では、お別れだ」
なぎほのひかり、無言でうなずく。
「・・・」
番人、懐から、サッと3冊のアルバムを出す。
番人「これを3人に与えてしんぜよう」
ひかり「えっ? これは?」
番人「光の園の様子やわたしたちのその後の様子が写真となって見られる特殊なアルバムだ。しかもこれは君たちにしか見えない」
なぎさ「わたしたちにしか・・・?」
番人「このアルバムによってわたしたちはいつまでも想い出でつながっているのだ」
ほのか「想い出でつながっている・・・?」
番人「そうだ。そしてこの想い出でつながっているかぎり、完全な別れではないし、いつかまた必ず会えるときが来るだろう」
ほのか「えっ! また、会える・・・?」
番人「うん。ただし、君たちの強い思いが必要だ。君たちの想いがなくなれば、このアルバムには何も写らなくなる」
なぎさ「だいじょうぶ。そんなこと、ぜ~っっったい、ありえないっ」
そう強調すると、なぎさ、ついに泣き出す。
なぎさ「う・・・う・・」
メップル「なぎさ~ああああん!」
メップルも大泣きする。
すると、ミップル・ポルン・ルルンも泣き出す。
三匹「うえええ~ん!! おおおおん!」
番人だけは冷静。
番人「ならば、また会える日を楽しみにしているぞよ。ではっ!」
ひかり「え、もう・・・?」
しかし番人は何も答えず、或る所作を行う。
すると、空間に七色に輝く虹のような空洞が開き、
番人やメップルら、その中へ吸い込まれて行くように、薄く薄くなって消えて行く。
メップル「なぎさあああ、なぎさあああ!」
なぎさ、両目、落涙しながら、
なぎさ「メップルウウウ! あ・・・」
メップル「なぎ・・・s・・・」
ホワンと消えてしまう。
ミップル「ほのかあああ」
ほのか「ミップルウウウ!」
ほのかも大泣きだ。
ミップル「「ほの・・・k・・・」
消えて残像が少し見える。
ほのか、ビックリしたように目をカッと見開き、
ほのか「ああっ! ミッ!・・・・。う・・・う・・」
ポルン&ルルン「ひかり、ひかり~~~」
ひかり「ポルン! ルルン!」
ひかりも泣いている。
ポルン&ルルン「ひか・・・r・・・」
ほとんど消えて二体の影しか見えない。
ひかりも驚く。
ひかり「ああっ! ポルンッ、ルルンッ! ううう・・・」
ひっそりとなって、しくしく泣く3人。
なぎさ、すべてを数珠繋ぎのように思い出す。思いつめたような表情で語り出す。
なぎさ「そうよ・・・みんなどこに行っても、わたしたちは強い思いで結ばれてるのよ。だって! こんなに美しい想い出があるんだからっ!」
そのとき、アルバムムカツキーに異変が起こったのである。
ムージョ「むっ!?」
ムカツキーのアルバムがトロケ出したのだ。
ムカツキー「ムカツキぃぃ!!」
ラピッド「ど、どうなってんの!?」
ルミナスは、
ルミナス「あああっ」
と驚きながら、
ルミナス<あ! ひょっとしてなぎささんの想い出がもとに・・・?>
そのなぎさも、事態がよく飲み込めていない。
なぎさ「なんで・・・?」
ムカツキー、原形をとどめないほど崩れたところで、ついにボムンッと爆発。
ムカツキー「むかつきいいい~!」
オチツキーへと分解。
オチツキー「オチツキ~ヤ、オチツキ~ヤ、オチツキ~ヤ」
ムージョ「なんとっ・・・?ま、まさかっ!?」
ムージョは、やっと、なぎさが、強い思いで、ムージョに盗まれた想い出を取り返したことに感づき、なぎさのほうへ視線を向けた。
ムージョ「あのお嬢さんが、じ、自分の力で・・・」
なぎさは、自分がムカツキーを破壊したとは知らず、少し離れたところで、無邪気に喜んでいる。
なぎさ「なんかしんないけど、ばんざ~い!」
なぎさの様子を見て、ルミナスとラピッドも思わず微笑む。
L&R「は、はは」
ムージョ「ううう!」
さらにL&Rは、ムージョが動揺したと見て、互いに頷き合い、すばやく手をつなぐと、ムージョに向けて、
ルミナス「光る時、かける(×)」
ラピッド「走る時、イコール(=)」
ルミナス&ラピッド「プリキュア・アストラル・トルネードオオ!!」
超音波のような渦巻状の閃光がルミナス&ラピッドの全身から発せられ、原爆のようにゆっくりと広がって行く。
アストラル・トルネードは、時の流れの重みを原動力にしている。
時の流れに逆らうナラクーダの者たちには、最も効果的な斥力を持つ。
ムージョ「ううう!」
ルミナス&ラピッド「はぁ!」
ムージョ「くうう。これが時の流れの重みですか・・・確かに、お・も・い・・・くっ!たあ!!」
ムージョ、踏ん張りきれず、退散。
なぎさ「終わったあ・・・」
なぎさ、戦いが終わると、途端に力が抜けたような表情になり、
なぎさ「あの想い出を忘れるなんて・・・ありえない」
とひとり呟いた。
変身を解かれたひかりとゆとりが、なぎさのもとへ駆けて行く。
ひかり「なぎささ~ん」
ゆとり「だいじょうぶですかあ?」
なぎさ、やや寂しそうに笑い、
なぎさ「うん、大丈夫」
ひかりとゆとりに、サアっと笑顔が戻る。
ひかり&ゆとり「わあ!」
さらに、ひかりが、
ひかり「あの・・・なぎささん。思い出せましたか。ほのかさんとのお別れのお話・・・」
なぎさ、神妙な表情で、
なぎさ「うん・・・」
ゆとりは、ひとり慌しく、
ゆとり「ああ、そうだった!! それ聞かなくっちゃ。それでなぎささ・・・」
しかしなぎさは、ひかりとゆとりにクルッと背を向け、俯き加減に歩み出す。
ゆとり「あ・・・」
ひかりとゆとり、「ん?」と怪訝そうになぎさの背中を見つめている。
だが、やがてなぎさ、顔を上げると、口元に笑みを浮かべ、心中独白。
なぎさ<やっぱりこれは、あたしとほのかだけの想い出。未来につながる生きた想い出だもん・・・ほのかっ、あたしの強い思いを込めて、飛びっ切り素敵な誕生日プレゼントを考えてあげるからね。どれだけ時が経っても忘れられないくらいのっ!>
そして、歩きながら、背伸びするように両手を挙げ、大声で、
なぎさ「よ~し、とりあえずたこ焼き食べに行くかああ!」
ひかりとゆとり、いつもの元気ななぎさが戻ったのを見届け、互いに顔を見合わせ、無言でニッコリ。
ひかゆと「ふふ」
プリキュアアルバム!
ひかり「4月4日といえば・・・?」
ゆとり「ほのまつりィ~!」
ひかり「はい、当たりです」
ゆとり「ひかりったら、またアタシを間違わせて、うんちくを披露しようとしたでしょ。前回の次回予告からその手には乗らないって言ってるのにい」
ひかり「いえ、わたしにはうんちくなんて、とても・・・」
ゆとり「でも、今回はひかりのうんちくがどうしても必要みたいだよ」
ひかり「え?」
ひかり&ゆとり「ふたりはプリキュア ミルキーウェイ。第12話「ほのかの誕生日」」
ひかり「わたしのうんちくって何の?」
ゆとり「ほのかさんの誕生日祝いの」
ひかり「ええ、なんですか?」
ゆとり「ヒント!ほのかさん曰く、『もしなぎさが外国に行ったら懐かしく感じるものが、わたしのほしいもの』だって」
ひかり「わかりました!」
ゆとり「ああ~。ひかり、今言っちゃダメだって。それは次回のお楽しみ。今は次回予告なんだから、空気読んでよね」
ひかり「すみません。やっぱりわたしにはうんちくなんて無理です。クスン。ゥう・・・」
ゆとり「いや、ああ、ゴメン、ゴメンね、ひかりちゃ~ん!」
またみてね!
著:ヒカルミの世界 / 絵:ヒカルミの世界・ラピー・shimizu_piecelot / 編:ライネス