・ 目次 / 第11話「盗まれた想い出」 (前のページ/次のページ) ・
前幕(第5幕)の続き。
話は進み、なぎさからわけを聞いた藤Pが開口一番、
藤P「ほのかの誕生日プレゼント?」
なぎさ「はい、先輩もご存知だと思いますけど、もうすぐほのかの誕生日なんです」
ひかりもハッとして、口を挿む。
ひかり「あ、そういえば4月4日・・・」
察しの早い藤P、すべての先を読んだようにニッコリして、卓上に両肘を付き、両手の平を指先で結んで、
藤P「それで? 俺に相談って?」
なぎさ、節目がちに喋り出す。
なぎさ「今年も、ほのかの誕生日に何か贈りたいんですけど・・・お互いもう高校生だし、それなりにちゃんとしたものじゃないといけないかなって思うし・・・」
藤P、緊張して言葉につまり気味のなぎさを安心させつつも、先を促すように、
藤P「うん」
なぎさ「それに、今ほのかはフランスにいて、わたしなんかよりよっぽどいろんな経験をしてるだろうし、いろんな珍しいものも見て、いろんな美味しいものも食べてるだろうから・・・」
(ここでなぎさが勝手に想像しているほのかの「豪遊」の図が二・三枚挿入される。たとえば、エッフェル塔の展望台で、なぜかガトーショコラをパクついていたり、カフェテラスで女優のようなドレスを着て、パリジャンとお茶していたり、など)
なぎさ「わたしなんかが何を選んでも、ぜんぶほのかにとっては、つまらないものにしか見えないんじゃないかって思って、それで・・・」
藤P「それで?」(やさしく)
なぎさ「それで、ほのかを幼いときから知ってる藤P先輩なら、わたしも知らないほのかの好みとか、ほのかが経験したことがないこととか、知ってるかなって思って・・・」
藤P、姿勢を正してにこやかに答える。
藤P「なるほどね。気持ちがこもってれば何でもいい・・・と言いたいところだけど、君たちみたいに付き合いが長くなると、もう何回も誕生日のお祝いをし合ってるだろうし」
(うん、うんと頷くなぎさが映る)
藤P「一回くらい、相手を驚かせるような意外なものを贈ってみたりしたくなるよね」
なぎさ、藤Pが気持ちを理解してくれたことの嬉しさが、初めて恥ずかしさを上回り、身を乗り出して、
なぎさ「そうなんですっ!」
と叫ぶ。
そして、なぎさは、急にリラックスして、笹の舟のたこ焼きを食べ始める。
食べながら、
なぎさ「(もぐもぐ)たまには驚かせて(もぐもぐ)みたいんです。ほのか、(もぐもぐ)何ひ〔し〕たって、(もぐもぐ)いふ〔つ〕もアハヒ〔アタシ〕の先を行っちゃってるから」
背後のひかり、食べながら言語不明瞭に喋るなぎさを、ちょっとビックリした顔で見ている。
ひかり「hue・・・」
なぎさ、相変わらず口をもぐもぐさせながら(言語は大分明瞭さを取り戻して)
なぎさ「今だって、フランスで勉強してて、アタシの知らない世界を毎日経験してるだろうし」
そしてなぎさは、口内のたこ焼きをゴックンと飲み下した後、少し黙っていたが、やがて目を伏せがちにして口を開いた。
なぎさ「これ以上遠くに行かれたら、あたし・・・」
なぎさは、そう言って、楊枝に刺していた次のたこ焼きを笹の舟に戻すと、寂しそうに俯いたのだった。
藤P、黙ってなぎさを見ている。
藤P「・・・」
さすがのひかりも、少しなぎさの気持ちを察したみたいで、気遣うようにつぶやく。
ひかり「なぎさ、さん・・・」
そして、ひかりは、なぎさを藤Pとふたりきりにさせるため、その場を離れ、ビーグルのアカネさんのところへと戻って行く。
ひかり、なぎ藤を背にして、歩いて遠ざかりながら、
ひかり<もうすぐ、ほのかさんのお誕生日、か・・・>
一方、なおみ〜うの席には、アカネさんが、注文の品、マンゴープリンとミルクセーキをそれぞれ二人前運んで来る。
アカネ「へい、お待ちィ!」
美羽「わあ、いただきま〜す」
奈緒「いただきます〜す」
アカネ「どぞどぞ」(ニッコリ)
奈緒、マンゴープリンを可愛く頬張る。
奈緒「おいひー!ジャン」
美羽も、マンゴープリンにスプーンを差して食べようとしたが、ハッと気づいたように、
美羽「あ、そうだ。アカネさん、美墨先輩と一緒に座ってるあの男の人、誰ですか?」
アカネ「ああ、彼は藤村君つってさ、中学のときからのなぎさの先輩だよ」
奈緒、ニヤニヤ探りを入れるように、
奈緒「ええ? それだけっすかあ〜? 彼氏じゃないんすかあ?」
アカネさん、<この子たちったら>といった風に苦笑いしながら、吐き出すように、
アカネ「さあ〜、アタシもそこまでは知らないよ。まあ、藤村君て、見てのとおり、ハンサムだしさ、女の子の知り合いなんてほかにも一杯いるんじゃないの?」
奈緒「でも、今日は、藤村さんが、美墨先輩を待ってたみたいですよ」
アカネ「ああ、ひかりによると、なぎさが彼に、ほのかの誕生日プレゼントには何がいいか、聞きたくて呼んだみたいよ」
美羽「えっ!! 雪城ほのか先輩の!?」
アカネ「うん・・・なんでも藤村君はほのかの幼馴染だっつーことらしくてさあ」
美羽「そうなんだあ〜・・・」
奈緒、呆れたように眉を顰めて、絞り出すような声で、
奈緒「またまた美羽は〜、雪城先輩のことになると、目の色が変るんだからあ」
美羽「(ちょっとむくれて)いいじゃない! (すぐ笑顔になって)そんな話ならわたしも混ぜてもらお!」
美羽、そう言うと、マンゴープリンを手に携えて、躊躇いもせず、なぎ藤の席へ向かう。
奈緒も、
奈緒「ああ、美羽、待ってよ〜。もうしょうがないなあ」
と言いながら、結構楽しいことを期待する顔で、美羽の後を追う。
アカネ「ちょっとあんたたち〜!」
アカネさんに制止されるが、なおみ〜うは、もちろん聞く耳を持たず、ニコニコしながら藤なぎの席のほうへ駆けて行った。