・ 目次 / 第11話「盗まれた想い出」・1 (前のページ/次のページ) ・
初っ端から、前回のミルキーウェイシップ上でのバトルシーンの回想。
リバーサスに落とされそうになったプリキュアのふたり。
ふたりが落ちたとき、ルミナスの発した光パワーを、ラピッドが、握り合う手を通じて受け取り、力を得ると、ルミナスともども甲板上に舞い戻り、さらに、そこで激しく左回転を始める。
すると、リバーサスによって不自然に進められていたときびとの庭の時間が戻って行く。
それが映りながら、デラタコカフェの無人のカフェテラス前でボーッと立って客待ちしているひかりの回想が始まる。
ひかり<あのとき、ラピッドに何が起こったの? ラピッドに、時間の速さを調整する力があるのなら、じゃあ、ラピッドは、・・・ゆとりさんは、シスター・シーズンと何か・・・>
* 今一度説明。<・・・>括弧は、心中独白を表します。
みなまで言わないうちに、ひかりに声をかける者あり。
それはなんと藤村省吾であった(学生服・ベローネ高等部男子部の制服は、デザインは変らず、色のみ、女子の新調に合わせて、緑(ただし、派手にならないよう女子のものより遥かにダークグリーン)の上下に変る)。
藤P「九条さん!」
ひかり「・・・」
ひかり、回想に耽っていたこともあって、藤Pの顔を見ても、とっさに反応できず、数瞬間無表情だったが、ようやく相手が誰だか気づいて、
ひかり「あッ、いらっしゃいませ・・・いえ、こんにちは・・・いえ、ご無沙汰してますう!」
ひかり、藤Pを、単なる客扱いすべきか、それとも愛する先輩なぎさの想い人あるいは自分自身の先輩として遇すべきかで、返答に戸惑い、大いに焦る。
これに対して、藤Pはもちろん余裕綽々顔で、
藤P「ああ、久しぶりだね」
来てねデラタコカ~フェへ プリキュアメニューでたっぷり召し上がれ イエイ!
いつも嬉しい帰り道♪
デラタコカフェダイナー!
第1幕の続き。
藤P「九条さん、元気?」
ひかり、藤Pのリラックスモードのおかげで、少し硬さが和らぎ、笑顔で、
ひかり「はいっ」
藤P、周囲をキョロキョロ眺め出す。
藤P「まだ・・・来てない・・みたいだね・・・」
ひかり「誰かと、待ち合わせ、してるんですか?」
藤Pサラッと、
藤P「ああ、美墨さん、とね」
ひかり、ちょっと驚いたような顔になって、
ひかり「美墨、さん・・・なぎささんとですか!?」
藤P「うん、なんか相談ごとがあるとかで」
ひかり「へえ・・・」
男女の機微のわからないひかり、いつものキョトン顔。
そのなぎさは、実はすでにデラタコカフェのところまで来ていたが、そばの茂みの陰に隠れて足踏みしていたのだった。。
学校帰りで、セーラー服。手にはカバンとラクロスのクロス。
なぎさ、カフェテラスの藤Pを、木陰に隠れて、遠巻きに覗き見しながら、
なぎさ「どうしよう~。来ちゃったよ。って呼んだのはアタシなんだけど・・・ああ~、アタシもう高校生なんだし、いい加減しっかりしなくちゃいけないのにィ・・・」
なぎさ、藤Pを意識しすぎて姿を見せることができない。
そのとき背後に、不意に奈緒美羽が!
なおみ~う、なぎさの存在に気づくと、興奮して、大声で、
奈緒「あっ!美墨なぎさ先輩!」
なぎさ、ビクッとして顔を顰める。
なぎさ「ひっ!」
美羽「ホントだ~! 美墨先輩だ~!」
奈緒「こんなところで、先輩に会えるなんて超ラッキージャンジャン!」
美羽「でも、美墨先輩、どうしてこんなところにいるんですかあ?」
奈緒美羽、キャッキャ言って、騒ぎ出す。
なぎさ、振り返って、大いに戸惑いながら、口の前に人差し指をピンと立てて、
なぎさ「ちょ、ちょっと、シー!」
奈緒「えっ? 美墨なぎさ先輩、どうしたんですかあ?」
美羽「なんかいつもの美墨先輩じゃないみたい。美墨先輩、どうしたんですかあ?」
奈緒美羽、一向に声を低めようとしない。
なぎさだけ声を潜めながら、
なぎさ「だ・か・ら、シー! だって」
奈緒、「シー」のポーズを、ふざけて真似しながら、
奈緒「なんで『シー!』なんですかあ?」
美羽「なにがあったのか教えてください、美墨先輩!」
美羽も楽しそうにカラみ、せっつく。
なぎさ、奈緒美羽の騒ぎがカフェテリアの藤Pにまで聞こえていはしないか心配で、後ろと前を交互に見ながら、オロオロ。
なぎさ「あ~あ~!」
奈緒&美羽「どうしたんですかあ、先輩?」
なぎさ「あ・あ・・・こら、ちょっと・・・」
なおみ~う、笑顔で、
なおみ~う「美墨なぎさせんぱあああ~い!!」
なぎさのぎこちない様子を見て、問い詰めようとする奈緒美羽は、ますます声を大きくしてなぎさの姓名を連呼し続け、ついにカフェテリアの藤Pにまで聞こえてしまう。
藤P「ん?」
藤P、なぎさたちのいる茂みのほうへ振り向く。
ひかりもそれにつられて、「は?」と見遣ると、そこに奈緒美羽がいることに気づき、途端に大リラックスモードに入って、爽やかな笑顔で、
ひかり「な~お! み~う!」
奈緒&美羽「ひかり~!」
ふたりも、手を振る。
藤P、その横に、木陰に半身を隠し縮こまったなぎさがいるのを発見し、手を振りながら
藤P「美墨さ~ん、待ってたよ~。こっちへおいでよー」
木陰に半身だけ映るなぎさ、動揺しながらガニマタでザッと全身を見せ、
なぎさ「はッ、はいぃぃ~ッ!」
奈緒美羽、なぎさのぎこちない様子を、幼児のような目で訝しげに観察している。
なおみ~う「Ho・・・?」
第11話「盗まれた想い出」!(ひかゆとの声で)
デラタコカフェのカフェテリア。
なぎさと藤Pは、同じ円卓に腰掛け、奈緒美羽は、少し離れたところの別の円卓に座っている。
ひかり、まずなぎさと藤Pに注文を聞こうとする。
ひかり「あの、ご注文は? なぎささんは、いつもみたいにデラたこ焼き2人前ですよね?」
なぎさ「うん!」
なぎさ、<デラたこ焼き>という言葉に条件反射して、すっかりいつもの調子でそう答えたあと、目の前の藤Pの存在にハッとなって、顔を赤らめ、
なぎさ「い、いやあ、あの、ナタデココミルク一つ・・・」
ひかり、ちょっと驚いて、
ひかり「えッ? それだけでいいんですか?」
さらにひかり、なぎさのカバンの横にラクロスのクロスが立てかけられているのを発見し、
ひかり「でも今日はラクロス部の練習があったんじゃ・・・部活の後はデラックスたこ焼きを3人前食べることだってあるのに・・・なぎささん、今日はどうしたんですか?」
なぎさ、慌てて、ひかりの口を覆って、ひかりが喋るのを制止しようとする。
なぎさ「あ~あ~!」
ひかり「んん~っ!!!」
そのとき、藤Pがサラリと、
藤P「俺は、たこ焼きにするよ」
なぎさ、ひかりの口を覆うポーズを取りながら、顔だけ藤Pに向けて、
なぎさ「え?」
藤P「俺もサッカー部の練習の後でお腹ぺこぺこだしね。美墨さんも、一緒に食べようよ、たこ焼き」
まだひかりの口を塞ぎながら、
なぎさ「は、はあ・・・」
ひかりはされるがまま、両目が中に寄っている。
ひかり「nn・・・!!」
藤P、なぎさの変な行動は気に留めない様子で、にこやかに、
藤P「それに、ここのたこ焼きはすっごく美味しいってほのかによく聞かされててさ、前から一度食べてみたいと思ってたんだ」
なぎさ、ハッとなって、
なぎさ「え? ほのかが・・・?」
なぎさ、徐ろに手を下に下げる。
やっと普通に呼吸させてもらえるようになったひかり、人知れず、胸に手を当て、ふうっと息を吐(つ)く。
ひかり「Hooh・・・」
ひかりの手だけが映り、藤なぎのテーブルに、たこ焼きの笹の舟が置かれる。
藤P、さっそくたこ焼きを頬張る。
藤P「んむんむ。あっホントだ! うまいなあ。さすがほのかが薦めるだけのことはあるね」
両手でお盆を持ったひかり、にっこりして、
ひかり「ありがとうございますう」
藤P「いや、お礼を言うならほのかだよ。ほのかのやつ、君のとこのたこ焼きはフランス料理より美味しいって、マジ顔で言ってたんだから」
なぎさ、まだ緊張して多少顔を赤らめながらも、思い切って口を開く。
なぎさ「あの・・・そのほのかのことで相談が・・・」
藤P「ん? あ、そうだ、メールで相談したいことがあるって書いてたけど、それって、ほのかのこと?」
なぎさ、恥じらい気味の笑みを浮かべ、
なぎさ「え、ええ・・・」
ひかり、キョトン顔で、ドギマギしたなぎさを見ている。
ひかり「は~あ・・・」
前幕(第5幕)の続き。
話は進み、なぎさからわけを聞いた藤Pが開口一番、
藤P「ほのかの誕生日プレゼント?」
なぎさ「はい、先輩もご存知だと思いますけど、もうすぐほのかの誕生日なんです」
ひかりもハッとして、口を挿む。
ひかり「あ、そういえば4月4日・・・」
察しの早い藤P、すべての先を読んだようにニッコリして、卓上に両肘を付き、両手の平を指先で結んで、
藤P「それで? 俺に相談って?」
なぎさ、節目がちに喋り出す。
なぎさ「今年も、ほのかの誕生日に何か贈りたいんですけど・・・お互いもう高校生だし、それなりにちゃんとしたものじゃないといけないかなって思うし・・・」
藤P、緊張して言葉につまり気味のなぎさを安心させつつも、先を促すように、
藤P「うん」
なぎさ「それに、今ほのかはフランスにいて、わたしなんかよりよっぽどいろんな経験をしてるだろうし、いろんな珍しいものも見て、いろんな美味しいものも食べてるだろうから・・・」
(ここでなぎさが勝手に想像しているほのかの「豪遊」の図が二・三枚挿入される。たとえば、エッフェル塔の展望台で、なぜかガトーショコラをパクついていたり、カフェテラスで女優のようなドレスを着て、パリジャンとお茶していたり、など)
なぎさ「わたしなんかが何を選んでも、ぜんぶほのかにとっては、つまらないものにしか見えないんじゃないかって思って、それで・・・」
藤P「それで?」(やさしく)
なぎさ「それで、ほのかを幼いときから知ってる藤P先輩なら、わたしも知らないほのかの好みとか、ほのかが経験したことがないこととか、知ってるかなって思って・・・」
藤P、姿勢を正してにこやかに答える。
藤P「なるほどね。気持ちがこもってれば何でもいい・・・と言いたいところだけど、君たちみたいに付き合いが長くなると、もう何回も誕生日のお祝いをし合ってるだろうし」
(うん、うんと頷くなぎさが映る)
藤P「一回くらい、相手を驚かせるような意外なものを贈ってみたりしたくなるよね」
なぎさ、藤Pが気持ちを理解してくれたことの嬉しさが、初めて恥ずかしさを上回り、身を乗り出して、
なぎさ「そうなんですっ!」
と叫ぶ。
そして、なぎさは、急にリラックスして、笹の舟のたこ焼きを食べ始める。
食べながら、
なぎさ「(もぐもぐ)たまには驚かせて(もぐもぐ)みたいんです。ほのか、(もぐもぐ)何ひ〔し〕たって、(もぐもぐ)いふ〔つ〕もアハヒ〔アタシ〕の先を行っちゃってるから」
背後のひかり、食べながら言語不明瞭に喋るなぎさを、ちょっとビックリした顔で見ている。
ひかり「hue・・・」
なぎさ、相変わらず口をもぐもぐさせながら(言語は大分明瞭さを取り戻して)
なぎさ「今だって、フランスで勉強してて、アタシの知らない世界を毎日経験してるだろうし」
そしてなぎさは、口内のたこ焼きをゴックンと飲み下した後、少し黙っていたが、やがて目を伏せがちにして口を開いた。
なぎさ「これ以上遠くに行かれたら、あたし・・・」
なぎさは、そう言って、楊枝に刺していた次のたこ焼きを笹の舟に戻すと、寂しそうに俯いたのだった。
藤P、黙ってなぎさを見ている。
藤P「・・・」
さすがのひかりも、少しなぎさの気持ちを察したみたいで、気遣うようにつぶやく。
ひかり「なぎさ、さん・・・」
そして、ひかりは、なぎさを藤Pとふたりきりにさせるため、その場を離れ、ビーグルのアカネさんのところへと戻って行く。
ひかり、なぎ藤を背にして、歩いて遠ざかりながら、
ひかり<もうすぐ、ほのかさんのお誕生日、か・・・>