・ 目次 / 第10話「アニメスタジオ見学」 (前のページ/次のページ) ・
ナラクーダ。
幽霊船甲板上のキャプテン・ニヒルーザ、いつものように暗い海をじっと見ている。
そこへ、リバーサスが、引き上げて来る。
ニヒルーザは、リバーサスの帰還を予め察していたのか、不必要の反応はせず、海を望見したまま、ボソリ、
ニヒルーザ「リバーサスよ、早いじゃないか。伝説の戦士を始末したのか?」
リバーサス、さきほどの動転と興奮を抑えるためか、かえって声を押し殺し、低めに、ゆっくりと、
リバーサス「いえ、それが」
ニヒルーザ、ここぞとばかりガッと振り向くと、左手に持っていた逆時計をリバーサスに向けて突き出し、威嚇するように、
ニヒルーザ「目的を果たさずして、どの面下げて戻って来たのだ!?」
リバーサスは、それを躱すべく、冷静を装い、
リバーサス「申し訳ございません。すぐにもキャプテン・ニヒルーザにお知らせしたいことがございまして」
ニヒルーザ、逆時計を突き出したまま、
ニヒルーザ「なんだ?」
リバーサス「プリキュアのうちのひとりは、光の園のクイーンの分身」
ニヒルーザ「ふむ」
ニヒルーザも、そのことは或る程度察していたらしく、さして反応しない。
リバーサスも、特ダネはこれからといった含みを持たせるため、一瞬沈黙した後、徐ろに語を継ぐ。
リバーサス「そしてもうひとりは・・・」
ニヒルーザ「もうひとりは?」
リバーサス、急に、一大事を告白する者然たる深刻な表情に変貌し、腹式呼吸で声も太め、
リバーサス「シスター・シーズン『本人』かもしれません・・・!」
ニヒルーザ「なにっ!?」
ニヒルーザも、さすがに驚き、逆時計を突き出した手を、カチャッと下げた。
そこへ、不敵な笑い声が高鳴る。
声「おほほほほほ!」
どうやら女の声だ。リバーサス、振り返る。
リバーサス「むう?」
そこには、女戦士が立っていた。やはり、ゼロ時計の帽章つき三角帽子と左目を覆ったアイパッチの独眼の風貌。ただ、口は小さめで、目は切れ長の上品そうな美女である。
オシャレでもあり、髪は結っているのか、ほとんど帽子の中にあって見えず、ボーイッシュなショートカットを思わせる。
いでたちは、黒いスーツを羽織り、首にはピンクのスカーフを巻き、大部分は上着の中へ入れている。
女戦士「おほほほほ! 相手が本丸だとわかって、急に怖くなって逃げ帰って来たのですか、リバーサス様?」
リバーサス「なに? お前は、ムージョ・・・」
彼女の名は・・・ムージョというらしい。
ムージョ「ですが、まさかリバーサス様ほどのお方に限って、そんなことはございませんわよね。ほほほ」
ムージョ、口調は上品至極だが、リバーサスを嘲っているのは見え見えだ。
リバーサスもそれを当然察し、悔しそうに歯軋り一切。
リバーサス「ぐぬう・・・!」
他方、ニヒルーザは、
ニヒルーザ「リバーサスよ。お前一人では頼りないんでな。ムージョにも協力してもらえ」
リバーサス、焦るように、
リバーサス「いえ、そのような必要は・・・」
ニヒルーザ「ふん。強がるな。逃げ帰って来たのはどこのどいつだ?」
リバーサス「そ、それは・・・」
ニヒルーザ「伝説の戦士が、伝説の戦士以上の存在かもしれぬとなれば、なおさら、お前一人では当てにならん」
どうやら、こういう事態を予測してムージョを呼んだのは、ニヒルーザその人だったようである。
ムージョ「よろしくお頼みしますわね」
ムージョは、ニヤつき、リバーサスは、屈辱の表情を強める。
ムージョ「うふふふ」
リバーサス「チッ」
ミルキーウェイシップ、船室内。
ルミナスが、シーズニーラピスを、タイムフルオルゴールの魚座の穴に入れると、シップ上のマストに張り巡らされたランプが一斉にパッと点燈される。
さらにシップは、汽笛を鳴らし、前進を始めた。
光の河の波を掻き分け、すごい勢いで進む。
金色のカモメが飛び、金色の鯨が金色の潮を吹く。ひかりとゆとりも(すでに変身は解けていた)、一瞬戦いのことや、セインフ・セインフの気がかりな発言などのことを忘れたように、嬉々とした無邪気な笑顔でそれらを見つめていた。
ひかゆと「わああ!」
セインフ「見えて来たセイン」
ひかり「あれが第3の島?」
ゆとり「うづきヶ島・・・」
前方に、島影が見え始める。早春の草花が萌え出しているらしく、青みがかった土地に覆われている。
岸が見えて来ると、MWシップは、徐々にスピードを落とし、着岸の体勢に入る。
光るカニのいる岩礁に横付けし、突き出た岩で出来た天然の舫(もや)い杭に、とも綱が、ビュルビュルッと巻き付くと、錨が水中へ落ち沈んで行く。
錨が底に着くと同時に、水中から、金色に光る魚が飛び出し、昇り鯉のように勢い良く天へ飛翔して行った。
ひかゆとセインフスワンフは、口を開けて、ため息をつくようにそれを見上げた。
ひかゆとセインフ&スワンフ「Haaa!」
金色の魚は、そのまま天に張り付いて、魚座となる。
ここでミルキーウェイシップの汽笛一声。
「ポアアアアン」
もとの日常に戻り、奈緒の父も無事取材を終え、スタジオ入り口で、稲村氏に挨拶。
父「今日は本当にどうもありがとう」
ひかり&ゆとり&奈緒&美羽、頭を下げて、
四乙女「ありがとうございました」
稲村「いえ、どういたしまして。またいつでも遊びに来てください」
ひかり「これからも素敵な作品を作ってください」
稲村「ええ、ありがとう」
ゆとり「あのー」
稲村「え?」
ゆとり「締め切りは大丈夫なんですか?」
稲村「ああ、心配してくれてありがとう。お陰さまで、間に合いそうだよ」
ゆとり、人一倍目を輝かせて、
ゆとり「よかったああ!」
ひかりは、意味ありげな顔で、スタッフの仕事の無事を我が事のように喜ぶゆとりを見ていた。
ひかり「・・・」
公園前、ひかり、すでに車から降ろしてもらって、みんなと別れ、一人で歩いているところから。
ひかり、デラタコカフェに向かう道中、公園の道を、セインフと話しながら歩く。
ひかり「ねえ、セインフ。あのとき、わたしたちはどうして、ああなったの?」
セインフ「ルミナスは、クイーンから分身したときの光のエネルギーの残りを発光してたんだと思うセイン」
ひかり「光のエネルギーの残り?」
セインフ「つまり、ひかりは、最後に残された光の力を、戦いの中で少しずつ出して行って、それを出し尽くしたとき、完全な人間になるんだセイン」
ひかり、ちょっと驚き、
ひかり「わたしが? 完全な人間? じゃあ、今のわたしは?」
セインフ「もうほとんど普通の人間だセイン。でも、もうほんの少し光の力が残っているセイン」
ひかり「わたしが完全な人間になるために、わたしの中に残っている光の力を出し尽くす。そして、それを受け取るのは、・・・ラピッド・・・」(さきほどの戦いでの該当シーンを回想しながら)
ひかり、ハッとなって、セインフに、
ひかり「え、じゃ、じゃあ、ラピッドは!? ラピッドはどうなるの!?」
セインフ、困り顔で、
セインフ「う〜ん、そこからが謎なんだセイン。クイーンの光を受けて時の流れの調整を行うのは、シスター・シーズンの仕事のはずなのに、あのときはなぜかラピッドがそれを行ったセイン」
ひかり「え、じゃ、じゃあ、まさかラピッドが、ゆとりさんが・・・?」
雪城邸。
ゆとり、すでに自室にいる。机に座って、アニメスタジオでトレースして、そのまま記念にもらったシャイニールミナスのデッサンを眺めていた。下手ながら、なんとなくルミナスだとわかる。
ゆとり、その絵から目を離し、宙を見つめながら、少し目を潤ませ、
ゆとり<シスター・シーズン・・・>
心の中でそう呟いたのである。
タイムフルオルゴール!
12個のシーズニーラピスを、それぞれ決められたラピスホールに入れたら、
12曲のプリティーなメロディーが聴ける。
タイムフルオルゴール!
DATTE 待ってらんないじゃん!
ひかり「4月4日といえば・・・」
ゆとり「ひなまつりー! おだいりさ〜まとおほのさま〜♪」
ひかり「え? おほのさま?」
ゆとり「うん。聞いたよ。4月4日は、ほのかさんのお誕生日なんでしょ?」
ひかり「なんだ、知ってたんですか」
ゆとり「ひかり、ひなまつりは3月3日ですなんてうんちく披露して、ほのかさんの真似をしようったって、そうは行かないんだから。へへへ」
ひかり「いえ、わたしは、説明が省けてよかったと思っただけですけど・・・」
ゆとり「無理しなさんな!」
ひかり「本当なんですけど・・・」
ひかり&ゆとり「ふたりはプリキュア ミルキーウェイ。第11話「盗まれた想い出」!」
ひかり「それで、なぎささんが、ほのかさんの誕生日プレゼントは何がいいかって藤村先輩に相談するみたいで」
ゆとり「そんなこと言って、デートの口実なんでしょ? もお〜! まわりくどいんだから。どうして素直になれないひとたちばっかなのお〜?」
ひかり「いえ、それも本当なんですけど。どちらかというと、素直に受け取ろうとしないのは・・・」
ゆとり「え?」
ひかり「い、いえ。なんでもないです」
またみてね!