・ 目次 / 第10話「アニメスタジオ見学」 (前のページ/次のページ) ・
稲村氏のデスクにて。
稲村氏、椅子に向かい、ペンを持ちながら、
稲村「まず、トレース作業。予め出来てる絵の上にトレーシングペーパーを置いて、線をなぞる作業です。これが技術の基礎になります。アニメーターの試験でも課題に出されたりします」
稲村氏、(セインフの顔を)キレイになぞる。
みんな背後から、固唾を飲むように、稲村氏の机の上を覗き込んでいる。その中で、ゆとりが、声を抑え気味に口を開いた。
ゆとり「すごぃっ。全然ずれないや」
稲村氏、みんなのほうへ振り向いて、トレースした絵をかざしてみせる。
稲村「こんな感じ」(羽を広げた綺麗なセインフの絵が浮き上がってる)
4人「はあ・・・」
稲村「さ、一番にやってみたいひとは?」
奈緒、自分に話を振られたかのようにうろたえながら、左右をキョロキョロして、
奈緒「まずううう〜美羽うう?」
美羽、苦笑して、手の平を振りながら、
美羽「アタシなんて無理無理。(ひかりのほうへ向いて)ひかり、上手そう。やってみなよ」
ひかり「え、わたしが?」
稲村氏、緊張気味のひかりをリラックスさせるように、笑顔で、
稲村「はは。さ、どうぞ。座って、描いてごらん」
ひかり「あ、はい・・・」
皆に促されるまま、不安げにデスクに座るひかりであった。でも、内心ワクワクしていたのではないだろうか。
ゆとり、莞爾と、
ゆとり「ひかり、ガンバ!」
ひかり「え、ええ・・・」
ひかり、椅子に座ると、蝶(キアゲハ)のイラストをなぞって行く。結構うまい。
ゆとり「あ、ひかり上手!」
社長室。社長と奈緒の父が、テーブルを挟んで両側のソファに座り、向かい合って話中。
机上にはティーカップに茶菓子入りの皿(秘書が用意したものか?)、書類が置かれている。
奈緒の父、ふと壁の時計を見る。
不審顔で、
父「あれ? おかしいな。この時計、進んでません?」
社長も、背後に振り向き、頭上の時計を見上げる。
泉堂アニメーション社長「え? あれ、確かに。もう夜中になってますね。たぶん故障でしょう」
(社長の風采:七三分けの黒髪は多少白髪交じりで、50代と覚ゆ。いかにも社長然としたメガネなぞはかけておらず、デップリとも太っておらず、むしろ伊達者の雰囲気。センスのよさそうなグレーのスーツ姿。声は、低い)
父「そうですよね。まだ1時間もお話させてもらってないのに・・・」
ところがちょうどそのとき、ドアの外のスタジオがザワザワし出す。社長室内からも、スタッフの声が聞こえる。
スタッフA≪あれ、なんでこんな時間なんだ?≫
スタッフB≪たいへんだよ。外はもう真っ暗だよ。本当に夜中になってる≫
スタッフA≪え、さっきまで確かに昼だったと思うけど。おかしいなあ≫
スタッフB≪とにかくまずいよ。今日の締め切りの分、このままじゃ間に合わないぞ≫
一方、稲村氏のデスク。
ひかりがまだトレース作業をしていた。
ひかりは、集中していて、騒ぎに気づかないし、ゆとなおみ〜うも、ひかりの筆の動きにずっと注目していた。ただ、稲村氏だけは、後ろをたまにチラッと振り返るなどして、すでに異変を察知しているようだった。
しかし、稲村氏は、ひかりたちをリラックスさせる役目があるので、ひかりのほうへ振り向くと、むしろ努めて落ち着いた声で、
稲村「おっ、綺麗に描けましたね」
ひかり、褒められてニッコリ。
ひかり「はいっ!」
デスクの上が映る。アゲハチョウの線描画がくっきりと描かれている。
稲村「じゃあ、次にもう少し難しいのに挑戦してみようか」
そう言って氏が取り出したるは、なんとシャイニールミナスの絵(キュアルミナスではなく)であった。
(ここで、スタジオのあちこちの壁やデスクの上に、シャイニールミナスらしきぬいぐるみやキュアブラック・キュアホワイトらしきぬいぐるみ、さらにはポルンとしか思えないぬいぐるみが飾ってあるのが、わざとらしく映る(これは、販促というより、前作へのオマージュを兼ねた余戯余興であろう))
稲村氏、みなに向かって、
稲村「じゃあ、次は誰が描きます?」
美羽が奈緒に、
美羽「奈緒、やってみたら? さっきバンザイして喜んでたでしょ?」
奈緒「え〜、この女の子の髪の毛なんてクルクルしてて、絶対わたし描けないよ〜」
すると、ゆとりが、毅然とした声音で、
ゆとり「じゃあ、わたしがやってみる!」
ひかなおみ〜うは、一斉にゆとりのほうを見る。気合の入りすぎたゆとりに、みな圧倒されて、声も出ない。
一同「hoo・・・」
社長室。外の騒動は続いている。
外の騒ぎにいよいよ不審を感じた奈緒の父が立ち上がり、社長室の窓のブラインドの隙間を開けて見る。
外の往来が映る。確かに真っ暗である。
奈緒父、驚愕の表情で、
父「こ、これはいったい・・・?」
ひかりのポシェットから顔を出したセインフが、そのまま翼を広げてパタパタ飛び出し、
ひかり、一瞬宙を見上げて驚いたあと、こちらへ振り向き、ニッコリ。
(改訂バージョン)
ウォッチコミューン。
ゆとり「3時のおやつだ!」
スワンフ「ふあああ! 3時は3時でも、夜中の3時なのスワ〜ン」
ゆとり「なんだー、じゃ、また寝よ!おやすみー!」
スワンフ「まったくゆとりはあ。7時の目覚ましはいくら鳴らしても起きないくせにスワーン!」
スワンフが、正しい時間を教えてくれる。
ウォッチコミューン!
画面の向こうから翼を広げて飛んで来たスワンフ。ゆとり、俊足で追いつき、ステップジャンプして、スワンフの足をつかみ、宙に浮く。ゆとりにっこりサクセスのピース。その直後に、スワンフの足から手を滑らせ、落ちそうになり、慌てふためく表情。
ゆとり、トレース作業進行中。シャイニールミナスの髪の毛がゴチャゴチャになっている。はっきり言って、汚い。
ゆとり「あれえ!? うむむ〜」
独りムキになって、肩を怒らせ、絵筆の筆圧を上げるゆとり。
それを背後で見ていた美羽が、漸く騒ぎに気づき、周囲を見渡しながら、
美羽「なんかざわついてるね」
奈緒も不安げに呼応。
奈緒「うん・・・」
稲村氏も、彼女らに気づかれた以上、とぼけているわけにも行かず、振り向くと、スタッフの一人に、
稲村「おい、どうした?」
ゆとりも異変に気づいて作業ストップ。振り返る。
ゆとり「ん?」
スタッフA「それが、気がついたらこんな時間になってて(壁の時計の時刻を示しつつ)、このままじゃ締め切りに間に合いません!」
稲村氏も、壁の時計を見ながら、
稲村「え? あ、ホントだっ。どうなってるんだ?」
奈緒らも時計を見て、完全に異変に気づく。
奈緒「うそ!? もう夜中じゃん。おうちに帰らなきゃ」
美羽「ていうか、わたしいつもならもう寝てる時間だよ」
ゆとり、異変の原因を察し、
ゆとり<まさか・・・>
絵筆をデスク上にパタンと置くと、ひかりに向かって、
ゆとり「ひかり!」
ひかり「え?」
ゆとり「ちょっと」
ゆとりは、そういって、椅子から立ち上がると、人気(ひとけ)のない廊下にひかりを呼ぼうとする。ひかりも、わけがわからないまま、ゆとりの後を追う。
廊下。ひかゆとしかいない。
ゆとり「ひかり、なんかおかしくない?」
ひかり「ええ、さっきまでお昼だったと思うけど・・・」
セインフとスワンフが、ひかゆとの懐のコミューンから同時に顔を出す。
セインフ「時の流れが勝手に速められてるんだセイン。きっとナラクーダのやつらの仕業だセインンンッ!」
スワンフ「嫌な気配が近づいてるのスワン。外に出てみるのスワーン!」
ひかり&ゆとり「えっ?」