・ 目次 / 第9話「百人一首カルタ取材」 (前のページ/次のページ) ・
競技は進んで、畳の上に残された札は、ラスト一枚。
茶和子が最初の一文字「あ・・・」と読み出した途端、
奈緒が、
奈緒「よっしゃあ!」
飛びつくように、すごい反応でゲット。
奈緒、畳に寝転がりながら、父のほうを見上げて、
奈緒「お父さん、今の決定的瞬間、ちゃんとカメラで撮ってくれた!?」
父、苦笑いを浮かべ、
父「ああ、ちゃんと撮ったよ」
奈緒「やったあ!」
奈緒、寝転がりつつ、無邪気にガッツポーズ。
ひかり「奈緒、よかったね」
ひかりも、優しい笑顔で奈緒を祝福。
奈緒「ウン!」
美羽「ホント、ゼロ枚じゃなくて」
美羽は、嫌味な顔で一言多くそう補足。でも、奈緒は気にしない。
奈緒「終わりよければすべてよしジャンジャン」
屈託のない笑顔で、そう言い切る奈緒。
茶和子、場を仕切る(最後に読み手をした成り行きで)。
茶和子「じゃあ、札を数えてください」
各自が、自らの札の数を一斉に数え出した。
美羽「一枚、二枚、三枚・・・」
小波美「一枚、二枚・・・」
茶和子は、扇状に広げた札を黙々と数えている。
優勝者が判明する前の緊張が、和室全体に空気が漂う。すべてを数え終えるまでは、例外なく全員に優勝の可能性が残されているからである。
奈緒「一枚・・・・・・」
れ、例外なく・・・
集計が済んだ模様。全員がそれぞれの位置に端座し、一瞬静まり返っている。
茶和子が、手元に集められた札に目を落としながら口を開く。
茶和子「早瀬先輩が35枚、九条先輩が33枚・・・もう後はいいですね」
なおみ〜うの苦笑いの表情が順次映される。
なおみ〜う「はは・・・」
茶和子「はい。ということで、早瀬先輩の優勝!」
ゆとり「やったね!」
ゆとり、Vサインしながら、ひとまず喜びを表す。
一瞬誰も反応しないので、奈緒父、率先してパチパチと拍手を始める。
それを見て、ひかりも拍手を始めると、全員が釣られてパチパチと拍手をし出す。
ゆとり、照れ笑い。
ゆとり「へへへ」
ひかり、拍手しながら
ひかり「ゆとりさん、おめでとう」
するとゆとり、まだ笑顔で、でもハッと思い出したように、
ゆとり「あ、でもホントはひかりの勝ちだったんだよ。アタシわかってるんだ」
美羽、疑問顔で、
美羽「え、どういうこと?」
ゆとり「ひかり、アタシと同時に取りそうになたったとき、いつも手を引っ込めたり止めたりしてたもん」
美羽「ひかり、ホント?」
ひかり「え? ・・・」
ひかり、ちょっとドキッとしたような表情に変る。でもそれ以上何も言わない。
そこで奈緒父が解説者口調で、
父「確かに、そうだね。九条さんは、払い手も使わないし、どこか力を出し切ってないように僕にも見えたね」
奈緒父までがそう指摘するので、父を信頼しきっている奈緒も、疑わざるを得なくなる。
奈緒「ひかり、どうして?」
ひかりは、少し憂いを帯びた目になり、やや下を俯いて、以下のように語り出した。
ひかり「ごめんなさい・・・わたし、百人一首は、生活の潤いになればと思って、生科部の課題として提案しただけで、勝ちとか負けとかにはあんまりこだわりたくなかったんです。もちろん、ゆとりさんみたいに、(ゆとりが映る)、そういう目標を持ったほうが早く覚えられる人もいるけど、(うつむくひかりが映る)わたしは・・・」
ひかり、顔を上げ、奈緒の父のほうへ向いて、
ひかり「真剣勝負をしなくちゃいけなかったのに、本当にすみませんでした」
奈緒の父、しかし、すがすがしい笑みを浮かべ、
父「いや、君の考えは間違いじゃないよ」
ひかり「え・・?」
父「遊びは楽しくなけりゃ遊びじゃないからね。あんまり勝ち負けにこだわりすぎて、嫌な気持ちになるようじゃ意味がないだろう」
ゆとりの、複雑な表情が映る。
父「いいインタビュー記事が書けそうだよ。どうもありがとう」
奈緒父、そう言うと、軽く頭を下げてみせた。
ひかり、大人から頭を下げてお礼を言われ、さすがに少し驚く。
ひかり「あ・・・」
が、やがて穏やかに微笑んだ。
ひかり「うふ」
他方でゆとりは、ややシュンとした表情になって視線を落としていた。
雪城邸。
ゆとりがさなえさんに話しかける。
ゆとり「さなえおばあちゃん、はい、これ」
ゆとり、そう言いながら百人一首の箱と現代語訳の本をさなえさんに返そうとする。
さなえ「おや、もういいんですか?」
ゆとり「うん、やっぱりわたしには向いてないみたい」
ゆとり、ちょっと謙虚な苦笑い。
さなえ「どういうことかしら?」
ゆとり「アタシったらすぐ勝ち負けにこだわって、歌の内容を楽しむ余裕がないんだもん」
さなえ「瀬を早み」
さなえさんは、不意に或る歌の暗誦をし始めた。
ゆとり「え?」
ゆとりは、当然何事かと思ってしまう。
しかし、さなえさん、気にせずさらに朗詠を続ける。
さなえ「岩にせかるる滝川の〜」
さなえ&ゆとり「われてもすゑにあはむとぞおもふ」
ゆとりも、わけがわからぬまま、一緒に下の句を朗誦していた。この歌は、いうまでもなく、ゆとりの姓『早瀬』を含む、ゆとりが一番最初に覚えたあの歌である。リバーサスが棒読みしたのもこの歌である。
歌い終わってなお、ゆとりは、どういうこと?といった不審な顔で、
ゆとり「さなえおばあちゃん、その歌・・・」
さなえ「どんなに急いだところで、必ずどこかで壁にぶつかって、バラバラにされる。でも、気持ちが繋がってれば、いつかまた会えるっていうのが、この歌の意味。急いで相手に合わせようとする必要はないんですよ」
ゆとり「え?」
さなえ「勝ち負けにこだわるっていうのは、周りに流されてる証拠かもしれませんね。大事なのは、流されることなく、流れにうまく乗るってことじゃないかしら?」
ゆとり「流されることなく、流れにうまく乗る?」
さなえ「でも、言うは易し、行うは難しですけどね。今日はとにかくもう寝て、明日からまたすべてを始め直しましょう」
ゆとり、一瞬ハッとしてさなえさんを見つめた後、穏やかな笑顔に変わって、しおらしく、
ゆとり「・・・はい」
庭の忠太郎は、呑気にもすでにぐっすり眠っている。
甕の水面は、漣(さざなみ)一つ立たず、月が、円形の輪郭をくっきりと反照させている。
タイムフルオルゴール!
12個のシーズニーラピスを、それぞれ決められたラピスホールに入れたら、
12曲のプリティーなメロディーが聴ける。
タイムフルオルゴール!
DATTE 待ってらんないじゃん!
ゆとり「ヤッホー! 奈緒のお父さんが、こないだの取材のお礼に、アニメの製作現場に連れてってくれるんだって」
ひかり「スタッフのみなさんのお仕事を邪魔しないようにしないと」
ゆとり「そうだねー。締め切り間際とか、すごく時間に追われてそうなイメージあるもんねー」
ひかり「ゆとりさん、詳しそうですね。一つ質問していいですか?」
ゆとり「いいよ。なに?」
ひかり「アニメってなんですか」
ゆとり「う・・・」
ひかり&ゆとり「ふたりはプリキュア ミルキーウェイ。第10話「アニメスタジオ見学」」
ゆとり「ひかり、アニメ見たことないの? 女の子の目がすっごく大きくって、変身したら髪が伸びたり、バンダナかぶったり」
ひかり「それって・・・わたしたちのことですか?」
ゆとり「そ」
またみてね!