・ 目次 / 第8話「百人一首」 (前のページ/次のページ) ・
ひかり「実は、生科部の課題、お料理は今のままでいいとして、もう一つ、暮らしに潤いを持たせるっていうテーマで、百人一首をしてみたらどうかなって思って」
小波美&茶和子、素っ頓狂な声で同時に、
小波美&茶和子「百人一首ぅ!?」
美羽「ああ、あれ?」
*美羽は、前第6話にて、ひかりがさなえさんから百人一首を借りる現場に立ち会っていたので、一応事情を把握している。
ひかり「うん。ちょっと見てくれる?」
ひかり、チャーハンの皿を空いた椅子に置き、椅子の横下に予め置いていたバッグから箱を出し、膝上に置くと、蝶結びの紐をほどく。パカッと箱の蓋を開ける。
さらにひかり、みんなに中身が見えるように、それを両手で差し出し、
ひかり「これ、借りものなんだけど」
小波美、背が低いので、椅子から腰を浮かせ、読み札の絵を覗くように見て、
小波美「わあ、キレイ!」
茶和子は、背が高いし、落ち着いた女の子なので、座ったまま、遠巻きに眺め降ろし、
茶和子「ホントだ。でも、九条先輩、百人一首って、お正月にするカルタじゃないんですか?」
ひかり「今はそうだけど、昔は季節に関係なくしてたみたい」
茶和子&小波美「はあ・・・」
ひかり「お正月はみんなが集まりやすいし、子供が遅くまで起きて遊んでても許される特別な日だったから、自然にお正月の行事になって行ったんですって」
美羽「へえ、ホントはいつしてもいいんだ・・・じゃあ、さっそくしてみる?」
ひかり、気遣いある笑みを浮かべ、
ひかり「いい?」
美羽、まだピンと来ないような、ノリ切れない調子で、
美羽「でも、どうするの?アタシも小学生のときちょっとしたくらいで、よく覚えてないんだけど」
第4幕からの続き。ただし、全員、長いテーブルのほうへ移動し、立っている。
ひかり、テーブルの上に取り札を並べて行っている。3人は、黙ってひかりの挙動を見ている。
ひかり、並べながらゆっくりと喋り始める。
ひかり「百人一首は・・・昔の貴族たちの絵とその人の和歌が書いてある読み札と・・・下(しも)の句だけ印刷してある取り札に分けられてて、今、わたしが置いて行ってるのは・・・取り札のほう」
美羽、ハッとして、
美羽「あっ、思い出した。誰かがその読み札を読んで、その歌の下の句が書いてある取り札を探すんだよね」
ひかり、美羽の顔は見ず、テーブル上になお取り札を丁寧に(でもランダムに)並べて行きながら、
ひかり「そう。だから、百人の歌をぜんぶ暗記してたら、読み札の上の句の出だしをちょっと聞いただけで、すぐ下の句が思い浮かんで、早く見つけられるの」
美羽「ひかりはぜんぶ暗記したの?」
ひかり「ううん、まだ3分の2くらい」(まだ取り札を並べていて、視線はテーブル上に落としたまま)
小波美「3分の2!?じゃ、九条先輩に勝てるわけないよ〜」
茶和子「わたしたちなんか相手にしても面白くないんじゃないですか、先輩?」(先輩に気を遣いながら、困惑顔で笑んで)
ひかり、ちょうど並べ終わり、下級生ふたりを見て、優しく気遣うように微笑みながら、
ひかり「ううん。そんなことないの。この遊びは、勝ち負けじゃなくて、昔の人たちの歌に親しむのが目的だから」
茶和子&小波美「はあ」
カメラ視線、広げられた取り札や、ひかりが箱の中から取り出す読み札を映し、しばらく沈黙のシーン(5秒くらい)。全員、ひかりの次のせりふに注目して、固唾を飲んでいる雰囲気。
そのあと、ひかり、全員の注目を十分に集めたことを感じ取って、満を持した者のように、マイペースで、かつ陶然となって再び語り出す。
ひかり「百人一首の歌はどれも何百年も前のものだけど、今読んでも、いいなって感じられるものばかり。月の光とかもみじの色とか川のせせらぎの音とか」
みんなを見渡しながら喋るひかりの顔。ひとりだけ、百人一首の世界に入り込んでいる感じ。
ひかり「どんなに時が経っても変らないものがあって、いつの時代の人でも同じように感動できるって、すごいことだと思いませんか?だから、これは暮らしの潤いのため・・・」
美羽「潤い?」
ひかり、笑んで、
ひかり「うん。潤い。お料理みたいに絶対暮らしに必要っていうわけじゃないけど、でも、あったらもっと楽しいなって思えるもの。そういうものに囲まれてたら、暮らしが潤うっていうか、豊かになるっていうか・・・」
茶和子と小波美、感嘆の声。
茶和子&小波美「おお!」
美羽、苦笑い。
美羽「なんか中華中華言ってるわたしが、みっともなく思えて来た・・・」
今度は、ひかりのほうが、気遣いの苦笑い。
ひかり「あ、ごめんなさい。そんなつもりで言ったんじゃ・・・」
美羽、にっこり笑って、
美羽「ああ、わかってる、わかってる。冗談よ。じゃあ、やってみましょ。あなたたちもいい?」(茶和子&小波美に訊く)
茶和子&小波美、すっかり受け入れ態勢の笑顔で、
茶和子&小波美「はいっ!」
体育館内。
バスケ部練習中。奈緒とゆとり、走りながら、ジグザグパッシングの練習。
白地にオレンジラインのバスケユニフォーム。胸にはアルファベットで「VERONE」、その下には背番号(胸番号)。ゆとりは「7」、奈緒は「70」。
ゆとり「奈緒!」(パスを出す)
奈緒「ナイスパス!」
奈緒、すぐパス。
奈緒「ゆとり!」
ゆとり「オーケー!」(パスをゲット)
奈緒「ゆとり、そのままシュートおお!」
ゆとり「たああ!」(ジャンピングシュート)
ゆとりのシュート成功。
奈緒、爽やかな笑顔で、手をグーにして、
奈緒「ゆとり、ナイスッ!」
ゆとり、奈緒のほうへ振り向いて、汗を迸らせながら、自信満々の笑顔。
ゆとり「へッへー」
バスケ部の練習後。
奈緒とゆとり、すでに制服に着替えて部室から出て帰ろうとしている。
ゆとり「ああ、おなかすいた」
奈緒「あ、思い出した。今日、生科部で美羽がなんか中華料理の実演をするとかって言ってたんだ」
ゆとり「えっ、じゃあちょっとおすそ分けもらっちゃおうか」
奈緒「うん、行ってみよ!」
ふたり、嬉々として駆け足で、教室のほうへUターンして行く。
こと食べ物のこととなると、バスケ練習の疲れを感じさせないふたりである。
ひかりのポシェットから顔を出したセインフが、そのまま翼を広げてパタパタ飛び出し、
ひかり、一瞬宙を見上げて驚いたあと、こちらへ振り向き、ニッコリ。
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画面の向こうから翼を広げて飛んで来たスワンフ。ゆとり、俊足で追いつき、ステップジャンプして、スワンフの足をつかみ、宙に浮く。ゆとりにっこりサクセスのピース。その直後に、スワンフの足から手を滑らせ、落ちそうになり、慌てふためく表情。
奈緒・ゆとり、生科部の家庭科室の戸を開ける。
奈緒「美羽、ひかり!あれ!?」
試食会をしているのかと思いきや、みんなでテーブルを囲んで、立ってカルタをしているので、ちょっと驚く。
ひかり「あ、奈緒、ゆとりさん」
ひかりが読み手をしていた。他の部員は、或る取り札を探すのに必死で、奈緒のほうへ振り向く余裕もない。
奈緒、歩いて近づきながら、
奈緒「なにしてるの?」
ひかり、苦笑いしながら、
ひかり「うん、ちょっと、百人一首でカルタ」
ゆとり、奈緒の背後から顔を出し、
ゆとり「百人一首って、あ、わたしんとこの蔵で見つけたアレ?」
ひかり「ええ。生科部の課題に出来たらいいなって思って」
奈緒「へえ、生科部ってなんでもありなんだ。だけど今日は中華作るって聞いたけど」
ひかり「あ、チャーハン作ったよ」
奈緒、笑顔で、
奈緒「え、やっぱり?」
ひかり「そこに少し残ってるから、よかったら食べて」
ひかりが手の平を上にして指し示した方向を見ると、別のテーブルの上にカセットコンロが置かれ、さらにその上に中華なべ(フライパン)が乗り、その中にかなり大量のチャーハンが残されていた。その横には、なぜかおあつらえ向きに、未使用の皿と蓮華もある。
奈緒「わ〜ホントだッ!」
ゆとり「遠慮なく、いっただきま〜す!」
ゆとりと奈緒、そちらへと向かう。
ゆとりと奈緒がチャーハンをちょっと口に含んだところで、背後から美羽の大きな声。
美羽「アッたああ!!」
奈緒&ゆとり「うっ!」(ビクッとして、チャーハンを思わず呑み込む)
ゆとり「な、なにぃ!?」(何事?という感じで振り向く)
美羽、一枚の札を読む。
美羽「からくれないに水くくるとは」
美羽、そのあと、ひかりに札の歌を見せ、
美羽「ひかり、これよね」
ひかり「はい、そうです」
茶和子「あ〜悔しい」
小波美「おっかしいなあ。そのへん、何回も見たはずなんだけどなー」
美羽「ただ眺めてるだけじゃ見逃しちゃうよ。意味を考えるんだよ、意味を」
小波美「へえ、加賀山先輩、もう意味までわかるんですか?」
茶和子「先輩、解説してください」