・ 目次 / 第7話「海洋博物館」 (前のページ/次のページ) ・
ナラクーダ。
幽霊船甲板の上でキャプテン・ニヒルーザ、後ろにリバーサスを従え、ナラクーダの海を望む。
ニヒルーザ「リバーサスよ、どうだ、ナラクーダの虚無の海は、いつ見ても美しいだろう」
リバーサス「はい、キャプテン・ニヒルーザ」
ニヒルーザ「いっさい光の差し込まぬナラクーダの海は、命が生まれることもなく、初めから時間が止まったままの純粋無垢な状態にある」
ニヒルーザのセリフとともに、カメラ視線は、さざなみも立たない不気味な暗い海を左から右へとゆっくり動く。
ニヒルーザの顔がアップに。いまいましげな目つき。
ニヒルーザ「それに引き換え、ときびとの庭の海では、シスター・シーズンのせいで時が流れ出し、命が誕生してしまった・・・」
太古の海の回想。
海面に光(=時の源)が差し込むところから始めて、海底で、海草が生えて来るシーン。
さらにエビや古代魚のような太古の生き物たちが徐ろに動き出す。
ニヒルーザ「それ以来、ときびとの庭の海では、単純な生き物からより複雑な生き物へと生命が進化して行った。やがて、海が生き物でいっぱいになると、ついに陸に上がって暮らす、足のついた生き物までが生まれた。そのせいで、ときびとの庭は、どこもかしこも命あるものだらけとなってしまったのだ」
リバーサス、無表情で、
リバーサス「まことに汚らわしい・・・」
ニヒルーザ「リバーサスよ、ときびとの庭とこのナラクーダと、どちらが美しい世界だ?」
リバーサス「もちろん、ナラクーダにございます。キャプテン・ニヒルーザ」
ニヒルーザ「だが、時の流れは留まるところを知らぬ。ときびとの庭で増え続ける命は、やがて住む場所もないほどにふくれ上がる」
ナラクーダの果てしない海が見晴るかされる。
ニヒルーザ「そのとき、時の流れは、新たな場所を求めて広がって行き、このナラクーダをも襲うだろう。この美しい虚無の海にも汚らわしい命が生まれ、時間が動き始めるのだ」
ニヒルーザの手にした逆時計アップ。ちょうどニヒルーザがギュッと握り締めたところで、秒針の逆周りのスピードもアップ。
ニヒルーザの顔再びアップ。
ニヒルーザ「この流れを食い止めるためには、時の主・シスター・シーズンの力を奪うしかないのだ。リバーサスよ!」
ニヒルーザ、逆時計を振りかざしながら、リバーサスのほうへ振り返る。逆時計のチェーン音がガチャッと鳴る。
リバーサス、直立のまま、一層頭を下げ、
リバーサス「は!」
ニヒルーザ「シスター・シーズンは、必ず伝説の戦士の近くにいるっ!やつらはシスター・シーズンにとわびとの庭へと導かれながら、同時に時の従者どもの安全を守るために存在する。したがって、まずはこのふたりを倒すのがお前の使命となる。行って来い、リバーサスよ、伝説の戦士・・・う~ん・・・」
ニヒルーザ、逆時計をリバーサスに対して、印籠のように突き出したまま、考え込む。
リバーサス、何事かと思い、顔を上げる。
リバーサス「ん?」
ニヒルーザ、厳粛な声で、
ニヒルーザ「パリキュアを倒しに!」
リバーサス「はっ!」
リバーサス<プリキュアなのだが・・・>
リバーサス、飛び立ちながら、
リバーサス<キャプテン・ニヒルーザともあろうお方が、何度もプリキュアの名の呼び間違いをなさるとは進歩のない・・・尤も、それを指摘したところで、どうせ、ナラクーダは進歩や進化を憎むと言い訳されるだけだろうな。先が思いやられるわっ!>
リバーサス、スピードを加速させてナラクーダを後にする。
待ち合わせ場所の若葉台駅前。
ひかりとひかるは、もう着ている。
ほどなくゆとり、リュックを背負って走って来る。
ゆとり「ひかり~」(手を振っている)
ひかり、笑顔で、
ひかり「あ」
ゆとり、ひかりの前で、急ブレーキをかけて、
ゆとり「遅くなっちゃった。ごめ~ん」
ひかり「ううん、ピッタリですよ」(ウォッチコミューンを見ながら)
ゆとり、額の汗を拭いながら、爽やかな笑顔で、
ゆとり「早く出発しすぎたんで、ジョギングかたがた公園のほうを遠回りして来てたら、ギリギリになっちゃった」
ひかり、ニッコリ笑顔で、
ひかり「ゆとりさんは、走るのが好きなんですね」
ひかる、ひかりの服の袖をグイグイ引っ張りながら、不安そうに、
ひかる「ねえ、お姉ちゃん。いつものふたりのお姉ちゃんじゃないの?」
ゆとり「え?いつものふたりって?ひょっとして・・・」(何か言いたげな不安そうな目でひかりを見つめる)
ひかり、ちょっと焦り顔になり、
ひかり「あ、いえ、なんでもないんです」
ひかる、ひかりを見上げて、
ひかる「このひと、この前うちに来てたひとだよね」
ひかり、ハッといいことを思いついたように、前向きな笑顔になって、
ひかり「あ、そうだ。このあいだ、うちに来たとき、まだ紹介してませんでしたよね。弟のひかるです。今、小学3年生です」
今度は、ひかるに、
ひかり「こちら、お姉ちゃんのクラスメートの早瀬ゆとりさんよ。ひかるちゃん、ご挨拶は?」
ひかる「九条ひかるです。はじめまして」(ぶっきらぼうに)
ゆとり、またニッコリ優しい笑顔になって、
ゆとり「はじめまして。ゆとりおねえちゃんって呼んでね」
ひかり、ゆとりとひかるの間を取り持ち、その場をなんとか丸く収めたような安堵の笑みを汗を滲ませながら浮かべていた。
が、急にハッと思い出したように、
ひかり「あっ、早くしないと電車に乗り遅れちゃいます」
ゆとり「ああ・・そうね」
3人、慌しく改札へと急ぐ。
ゆとり、ゆっくり駆けながら、ひかるの手を引いて改札を駆け込んで行くひかりの後ろ姿を、何か物足らなそうな不興顔で眺めている。
ゆとり「・・・」
ひかりのポシェットから顔を出したセインフが、そのまま翼を広げてパタパタ飛び出し、ひかり、一瞬宙を見上げて驚いたあと、こちらへ振り向き、ニッコリ。
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画面の向こうから翼を広げて飛んで来たスワンフ。ゆとり、俊足で追いつき、ステップジャンプして、スワンフの足をつかみ、宙に浮く。ゆとりにっこりサクセスのピース。その直後に、スワンフの足から手を滑らせ、落ちそうになり、慌てふためく表情。
海岸の風景。
そのそばの海洋博物館に着く。
ひかり、チケットを窓口で買うところ。
ひかり「子供3枚、お願いします」
窓口のおばさん「はい、子供3人分」
ひかり「ありがとうございます」
ひかり、ゆとりとひかるのほうへ向き直って、
ひかり「はい、これがひかるちゃん。こっちがゆとりさん」
ゆとり「ありがと。えっと、いくらだっけ」(財布を開けて)
ひかり「あ、いえ、誘ったの私だから、おごりです」
ゆとり「え?ダメだよ。えっと(窓口を見て)、150円か、(お金を財布から出して)はい」
ひかり、困り顔で苦笑いしながら、
ひかり「いえ、本当にいいんです。弟の遊びに付き合わせちゃったし」
ゆとり、とたんにムッとして、
ゆとり「誤解しないでっ!アタシは来たいから来たのっ」
ひかりは、一瞬キョトン。
ひかり「え?」
ゆとり、ムッとしたまま、ひかりを睨むようにお金を突き出す。
ゆとり「はいっ」
ひかり、恐縮しながら恐る恐る手を出し、俯き加減・上目遣いに、
ひかり「あ、ど、どうも・・・」
ひかる、不思議そうな呆け顔をして黙ってふたりの顔を見比べている。
ひかる「ぁ・・・」