■ 第6話「日本舞踊」

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ひかり、清元に合わせた、非常にスローな舞い方。
さなえ「あら」(なかなか上手なので感心する)
他の3人「へえ」「はあ」

踊り終わる。舞台から降りて戻って来たひかりに、ゆとり、
ゆとり「ひかり、初めてじゃないでしょ?」
ひかり「え、初めてですよ?」
美羽「とてもそうは見えないよ」
奈緒「うん、やっぱひかりってセンスいいね」
ひかり、決まり悪そうに微笑んで、
ひかり「そんな。わたしはただ、音の流れに合わせて、できるだけゆっくり動こうとしただけ。日ごろのんびりしてるから、たまたま曲のリズムに合っただけじゃないかなあ」
さなえ「いえいえ、ゆったり構える姿勢が大事なんですよ。私の昔のお弟子さんたちも、最初はみんな早く上手になろうとして、動作も自然と速くなっちゃってね。ひかりさんみたいに最初からゆとりをもって舞えるひとは少ないですよ」
ひかり、はにかんで俯き加減に、
ひかり「わたし、すぐ上手になれるなんて思ってないから・・・」
ゆとり、信頼の笑みを湛え、はにかむひかりを励ますように、
ゆとり「わたしが思ったとおり、ひかりはこういう古風なお稽古事に向いてるんだよ」

ここで、奈緒、話の流れをぶった切るように、
奈緒「そうだ!なんでゆったり踊れないかわかった!」
美羽、鬱陶しそうな目と声で、
美羽「なによ、急に?」
奈緒、自分のアメリカ軍風セーラー服のカラーを指でつまんで、
奈緒「服よ服。和服を着ないから気分が出ないのよ」
美羽「ぇえ〜?」(疑うような目で)
奈緒「特にアタシみたいな運動部系は、カジュアルな恰好してたら、ひかりみたいにお上品になれなくて、動きが荒っぽくなっちゃうのよね〜」
美羽、呆れた驚き顔で、
美羽「上手く踊れないからって、着てるもののせいにするわけ?」
奈緒、開き直るようなこだわりのない笑顔で、
奈緒「いいジャンジャン。やるだけやってみれば。(美羽からさなえさんのほうへ振り返りって)おばあさん、なにかこうやって着られる感じの(左右の両襟を重ねるポーズを取りながら)浴衣みたいな服ってありませんか?」
さなえ「ああ、そうですねえ。蔵の中に何着かあったような」
ゆとり「アタシ、取ってくるよ!」
ゆとり、すっくと立ち上がって部屋を出て行く。
美羽、ポカンとして、
美羽「ゆとりまでどうしたんだろ?」
奈緒、笑みながら、
奈緒「ゆとりはわかってくれたんだよ。一を聞いて十を知るってやつ?」
美羽、眉を顰め、
美羽「またそれ〜?」
ひかり「あ、じゃあ私も一緒に行きます」
ひかり、立ち上がる。
美羽「ひかりまでえ〜?」
ひかり「それでみんなが上手になれたら一番いいし、それに4人分、一人で運ぶのたいへんだから」
ひかり、そう言い残すと、障子戸を開けて出て行く。
さなえさん、残ったふたりに、
さなえ「じゃあ、ふたりが戻って来るまで、また振り付けのお稽古をして待ってましょうか」
なおみ〜う、素直に、
なおみ〜う「は〜い」

・第9幕

蔵の中、扉が開いて光が差し込む。
ゆとりが入って来た。
ゆとり「どこだろう・・・」
かなり遅れてひかりが到着。
ゆとりの俊足に追いつこうと無理をしたため、激しく息切れしている。
ひかり「ハアハア、ゆとりさん」
ゆとり、振り返って、
ゆとり「あ、ひかりッ」
ひかり「ゆとりさんひとりで運ぶのたいへんかなって思って・・・ハァハァ」
ゆとり「そう?ありがと」(合点してニッコリ)
ふたりで手分けして、浴衣を探す。
ゆとり、古時計を見つけ、興味を示す。針がちゃんと動いている。
ゆとり「動いてる。まだ使えるんだ」
ひかりは、玉手箱のようなチョコレート色の箱を発見。紐が緩んでいたので、簡単にほどいて、それをパカッと開けてみる。
ひかり「あ・・・」
それは『百人一首』。
ひかり、上のほうの札を何枚か取って、扉からの僅かな光で辛うじて読める文字を真剣に眺めている。
ひかり「へえ・・・」
そのとき、ゆとりが、声を出す。
ゆとり「あった!」
ひかり「え?」
ゆとり、ひかりに見せながら、
ゆとり「これ、浴衣だよね」
ひかり「え、ええ、たぶん」
そのとき、セインフ、ひかりのポーチから、
セインフ「ここはまずいセイン」
ひかり「え?」
スワンフもゆとりのポーチから、
スワンフ「ナラクーダの気配がするセイン!」
ゆとり「ナラクーダ?こんなところにまで?」
古時計の針がピタッと止まる。すると、空間にひびが入り、暗闇に光が差し、ひかりとゆとりがその中へ吸い込まれて行く。
ひかり&ゆとり「キャアアアア!

・第10幕

ちょうどその頃、稽古場では、奈緒と美羽が、桧舞台の上で、曲に合わせて踊りの練習をしていたが、突然ピタッと止まってしまう。
さなえさん驚く。
さなえ「どうしました?奈緒さん、美羽さん!」
そしてさなえさん、部屋の時計を見ると、針が止まっている。
さなえ「こ、これは・・・」
さなえさん、蔵の方角を向き、心の中で、
さなえ<ひかりさん、ゆとりさん・・・>(心配そうに)

・第11幕

どこか異世界。
ひかりとゆとり、その異世界に来ていることに気づく。
ひかり「こ、ここはどこ?」

そのときリバーサス、不敵に登場。
リバーサス「ようこそ、無時間の世界へ」
ゆとり「やっぱりあなたの仕業ね!」
ひかり「どうして蔵に入ったとたんに・・」
リバーサス「過去の時間がほこりのように積もった場所を、我らナラクーダは憎むのだ」
ゆとり、怒り心頭に発したように、
ゆとり「どんなおうちにも、過去の思い出になるようなものはあるでしょ!!」
ひかりも、弱々しく(恐る恐る)問い質すように、
ひかり「それの・・・何が・・いけないんですか?」
リバーサス「過去の思い出?ふん、過ぎたるは及ばざるが如し。過ぎたものはもう戻って来ないと、ときびとの庭のことわざにもあるではないか?」
リバーサス、そう言い終ると、珍しくおどけた表情になり、
リバーサス「おっといかん。あまり初中終ときびとの庭に関わっているものだから、つい過去の遺物のゴミ薀蓄を吸収しては披露してしまう。俺の有り余る知性にも困ったものだな。気をつけねば。ふふ」
ゆとり、呆れた表情で、
ゆとり「はあ、ナルシスト?」
他方ひかり、リバーサスを警戒して身構えながら、消え入るような震える声で、
ひかり「それ・・・意味が・・・違います
リバーサス「ん?」
ひかり「過ぎたるは及ばざるが如しは、そんな意味じゃ・・ありません・・・」
リバーサス「なんだと?」
ひかり「たとえば・・・おなかがすいてるからって、食べ過ぎたら、苦しくなっちゃうっていうことです」(真剣な顔で)
ゆとり、ひかりを見て、リラックスした笑顔で、
ゆとり「ああ、わかるわかる。そういうことってよくあるもんね」
そして、ゆとり、リバーサスのほうへ振り向いて、きわめて挑発的に、
ゆとり「あなたの有り余る知性ってのも、大したことないね。それとも、有り余りすぎて、間違った知識までゴミ箱みたいに吸収しちゃうの?」
リバーサス、屈辱の表情を浮かべ、
リバーサス「キッ!そんな言葉の意味など、過去の者どもが勝手に決めたことだろう。そんなものをありがたがること自体まったく無意味なのだ!」
そして、リバーサス、自分の失態を有耶無耶にするかのように、しゃにむに叫ぶ。
リバーサス「ムカツキー!」

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