・ 目次 / 第3話「家庭訪問」 (前のページ/次のページ) ・
加賀山家、門前。
美羽(私服姿。青のトレーナー。花柄のついた膝上丈のスカート。白の靴下)、美羽の母(瀟洒な婦人)、桜井先生(こぶとりなおばさん風)
美羽、桜井先生から、次の家庭訪問先のゆとりが、雪城邸にお世話になっていると聞いて、驚きながら目を輝かせている。
桜井「そうみたいね」
美羽「へえ、今まで考えたことなかった。でも、先輩のおうちに住めるなんていいなあ」
桜井先生、優しそうな笑顔で美羽を見て、
桜井「加賀山さん、雪城さんのこと詳しそうねえ」
美羽、一層目を輝かせて、
美羽「ええ、そりゃあもう、わたしの憧れの先輩ですから」
美羽の母、眉を下げ、苦笑気味に、
母「この子ったら、その雪城さんに憧れるのはいいんですけど、勉強まではなかなか追いつかなくって」
美羽、ふくれっつらになって、
美羽「あ、お母さん、ひど〜い!」
美羽母、桜井先生のほうへ向いて、
母「なんでも雪城さん、いつも学年トップの成績だったんですってね。今はパリに留学中だそうで」
美羽「簡単に追いつけないから憧れるんじゃない。ね、桜井先生!」
桜井先生、会話に参加せず、ゆとりの地図と難しそうな顔でにらめっこ。
美羽、それに気づいて、
美羽「ん? 先生、雪城先輩のおうちわかりますか?」
桜井「それが、ちょっとわかりにくい地図で・・・」
桜井先生、美羽にそれを見せる。
ほとんど道順が書かれておらず、ただ広い家の内部の見取り図みたいになっている。
木戸の位置、その内側に下手な犬の絵(忠太郎)、玄関にさなえさんの棒人間の絵(『さなえおばあちゃん』)と注意書きがあるので、辛うじてさなえさんだとわかる)、そして廊下に矢印がしてあり、そのゴールが「ここ」と記され、自分の部屋の位置がチャチャッと黒塗りされているだけ。
美羽、顔を歪めて、額に手を置き、
美羽「あちゃー。ゆとり、いくら大きなおうちだからって、家の中の地図描いてどうすんの?」
美羽、すぐ笑顔に戻って、先生のほうに向いて、
美羽「先生、わたしが案内しますよ。そんなに遠くないし」
桜井「加賀山さん、知ってるの?」
美羽「入ったことはないけど、見に行くだけなら何度か・・・大きなおうちだからすぐわかりますよ」
桜井「そう、助かるわ。じゃあ、時間もないしすぐ行きましょうか」
美羽「ハイ! じゃ、お母さん、行って来ま〜す」
母「ええ、雪城さんに失礼のないように、先生を案内したら、すぐ戻って来なさいよ」
美羽、素直に笑って、
美羽「はは。わかってるって」
母「じゃあ、行ってらっしゃい。気をつけてね」
美羽「は〜い」(手を振って)
桜井先生と美羽の母は共に無言で会釈し合う。
デラタコカフェ。オレンジ・黄色の車体は変わらないが、グリーンのラインがところどころに混ざり、目立つようになっている。
ひかり「お待ちどうさまでした」(たこ焼き&ナタデココミルクのセットを持って客席へ)
客(母)「あら、美味しそう」
子供「わあ、ナタデココのツブツブ、可愛い」
客「新メニュー増えて、忙しいでしょ?」
ひかり「ええ、ちょっと・・・」(おとなしそうな笑顔で)
客「いつ来てもお店やってるけど、お休みは?」
ひかり、普通の顔に戻って、
ひかり「お休みないんです。わたしは学校の部活でよく抜けますけど」
客「あらそう、たいへんね。でも、あんまり無理しないでね」
ひかり、明るい笑顔で、
ひかり「はい、ありがとうございます。どうぞ、ごゆっくり」
車内に戻る。
ひかり「たこ焼きナタデココミルクセット、届けました」
アカネ「(たこ焼きを焼きながら)あ、ありがと。リニューアルしてまだ間もないから、新メニュー知らないお客さんも多いし、宣伝もかねて、今のうちにどんどん売り出さないとね」
ひかり「そうですね」
・・・
ひかり、カフェテリアに出て、空いたテーブル席を拭く。
パラソルは、グリーンとホワイトのストライプ地。
ポケットからセインフが顔を出す。ウサギ型耳がパッと飛び出す感じ。
セインフ「ひかり、ひかり」
ひかり「シー、どうしたの。大きな声を出しちゃだめよ」
セインフ「アカネさんに、家庭訪問のこと、ちゃんと言ってるのかセイン?」
ひかり「それが、なかなか言い出しづらくって」
セインフ「ちゃんと言わなきゃダメだセイン」
ひかり「うん、わかってるんだけど、今、アカネさん、リニューアルしたばっかりで、いっときもお店から離れたくなさそうだし」
セインフ、困り顔で、
セインフ「ひかりは本当にアカネさん思いのいい子だセイン。だけど、急に先生に来られて一番困るのもアカネさんだセイン」
ひかり、眉の下に陰を作って、
ひかり「うん、そうよね」
雪城邸。
さなえさん、庭の掃除。
ゆとりは縁側廊下をすごい速さで雑巾がけ。ドドドドという感じ。
ゆとり「おりゃ〜!」
さなえ「あらあら、ゆとりさん、そんなに慌てて拭かなくても、ゆっくりでいいんですよ」
ゆとり、額の汗を拭きながら、笑顔で、
ゆとり「うん、でも、アタシこれが普通なんですよ。自慢じゃないけど、足の速さだけは誰にも負けたことないから」
さなえさん、ほほほと笑いながら、
さなえ「そうですか。元気があっていいですね」
ゆとり、こぶしを握り締めて、
ゆとり「はい! 元気だけが取り得です。ほのかさんみたいにお勉強が出来ないぶん」
ゆとり、木戸が開いたのにはっと気づく。
ゆとり「あ、来た」
木戸が開く。美羽が桜井先生を連れて入って来る。
美羽「先生、ここです」
桜井「お邪魔します。わあ、広いおうち」
ゆとり、廊下に跪(ひざまず)いたて、雑巾を持ったまま、ポカンとして、
ゆとり「あれ、美羽。どうしたの?」
美羽「どうしたのじゃないわよ。何これ?」(例の地図を捜査令状のように突き出して見せる)
美羽「おうちの道順描けって言われて、おうちの中の通路描いてどうすんの?」
さなえさんも地図を覗き込み、棒人間の自分の絵を見て、クスクス笑う。
さなえ「まあ」
美羽「こんな地図で先生わかるわけないじゃん。それでわたしが案内して来たんだよ」
ゆとり、立ち上がりながら、
ゆとり「え、ああ、そうだったんだ。美羽、サンキューベリマッチ」
美羽「もう、調子いいんだから」(腕を組んで眉をひそめる)
一同笑う「ははは」
美羽「でも、ゆとりが雪城先輩のおうちに住んでるなんて知らなかった。ときどき遊びに来ていい?」
ゆとり「うんっ!」(深くうなずく)
ゆとり、さなえさんのほうへ向いて、
ゆとり「さなえおばあちゃん、いいでしょ?」
さなえ「ええ、もちろんいいですよ」
美羽、ツインが揺れる。
美羽「わあ、やった。じゃ、また来るね」(Uターンして帰ろうとする)
ゆとり、<ああ〜>と呼び止めるような顔をして、雑巾を持っていないほうの手をさし伸べ、
ゆとり「ああ、今すぐ上がりなよ。美羽も一緒に先生の話聞こ」
美羽、眉を悩ましげに下げながら、笑って、
美羽「えーいいよ、ゆとりが先生に説教されてるとこなんか見たくないし。じゃ、帰るね。失礼しましたー」
桜井「加賀山さん、ありがとう。気をつけてね」
美羽「はい」(木戸を開け閉めして出て行く)
ゆとり、美羽を見送ったあと、不審顔で、
ゆとり「え〜、説教ってどういうこと?」(ポカンとして)
ひかりのポシェットから顔を出したセインフが、そのまま翼を広げてパタパタ飛び出し、
ひかり、一瞬宙を見上げて驚いたあと、こちらへ振り向き、ニッコリ。
来てねデラタコカ〜フェへ プリキュアメニューでたっぷり召し上がれ イエイ!
いつも嬉しい帰り道♪
デラタコカフェダイナー!
画面の向こうから翼を広げて飛んで来たスワンフ。ゆとり、俊足で追いつき、ステップジャンプして、スワンフの足をつかみ、宙に浮く。ゆとりにっこりサクセスのピース。その直後に、スワンフの足から手を滑らせ、落ちそうになり、慌てふためく表情。
雪城邸、玄関。
ゆとりの家庭訪問が終わり、さなえさん・ゆとりが、玄関まで先生を見送りに。
桜井「とにかく、早瀬さんは、元気があっていいし、学科については、ゆっくりあせらず時間をかけて少しずつ成績を上げて行きましょうね」
ゆとり「は〜ぃ」(うんざりした顔で)
桜井「では、失礼いたします」
さなえ「お気を付けくださいね」
ゆとり、両手で大きく手を振って、
ゆとり「さようならー」
でも、心の中では、
ゆとり<あ〜あ、さんざん絞られた。家庭訪問ってもっと楽しいものだと思ってたのに。ずっと正座してたら足も痺れて来たし>
そのとき、桜井先生、すぐまた玄関を開けて入って来る。
ゆとり「あれ、どうしたんですか?」
桜井「ごめんなさい。今日最後の訪問先の九条さんのおうちなんだけど、この地図のとおりでいいのかしら」
ゆとり「え?」
桜井「これだと公園の中ってことになっちゃうんだけど」
ゆとり「あ、ホントだ」
ゆとり<ひかり、アカネさんのアパートじゃなくて、お店の行き先描いてるよ。なんで?>
結局、ゆとりもひかりの店まで先生を案内することに。
その道中。ポーチのスワンフが騒ぎ出す。
スワンフ「ゆとり、ゆとりっ!」
桜井「ん?」
ゆとり、慌てて押さえて、
ゆとり「あ、ちょ、ちょっと待っててくださいね」(後ろに下がる)
ゆとり、ヒソヒソ声で、
ゆとり「スワンフ、ダメじゃない、騒いじゃ」
スワンフ、困った顔をして見上げる。
スワンフ「ナラクーダが近くにいるのスワン」
ゆとり「えええっ?」
スワンフ、垂れていた耳がピンと立って、ビックリ顔で、
スワンフ「来たのスワ〜ン!」
ゆとりが後ろへ振り向いたとき、桜井先生の腕時計がピタッと止まる。
同時に先生、そこで動けなくなってしまう。
ゆとり、先生のほうへ駆け寄り、
ゆとり「あ、先生。しっかりしてください。桜井先生!」(揺さぶりながら)
そこへ魔人・リバーサスが舞い降りて来る。
ゆとり、すぐに感づいて振り向くと、手をギュッと握り締め、キッとした目で、
ゆとり「あ、あなたは!」
リバーサス「消えてもらう前に、一つ聞きたいことがある」
ゆとり「な、なによ!?」
リバーサス「お前は、シスター・シーズンの居所を知っているな?」
ゆとり「シスター・シーズン? 知らないわよ。そんなひと見たこともないしぃ。あなたたちが勝手に言ってるだけじゃない」
リバーサス「そうか? 確かにお前の周辺には、シスター・シーズンらしき雰囲気が漂ってるんだがな」
ゆとり、左右両肩から背中を覗き込むように、
ゆとり「ええ〜どこどこお?」
リバーサス「尤も、俺もシスター・シーズンを見たことはないわけだがな」
ゆとり、呆れて、
ゆとり「はあ? 自分が見たこともない人の雰囲気がどうしてわかるの? あなた、ちょっとおかしいよ」(最後は腕組みして、<一緒に考えてみてよ>、といった態度になる)
リバーサス、ゆとりの疑義を真剣に受け止める素振りはなく、
リバーサス「まあいい。どうせお前にも消えてもらうんだ。はあ!」
手から衝撃波。
ゆとりは運動神経がよく、華麗によける。
ゆとり「ああっとおお!」
スワンフ「ひかりのところへ行くのスワン」
ゆとり「でも、どうやって? ここからデラタコカフェまで結構距離あるのに」
デラタコカフェ。
ひかり、バケツの前に蹲踞(しゃが)んで布巾を絞っている。
ひかり<そろそろ先生の来る時間だ。どうしよう>(極めて深刻そうな顔で)
ひかり、アカネさんのほうを見遣る。
アカネさん、鼻歌混じりで、相変わらず、ジュージューとたこ焼き作りに余念なし。
セインフ顔を出す。ウサギ型耳がビクビク動く。
セインフ「ひかり、大変だセイン」
ひかり「どうしたの、セインフ?」
セインフ「ゆとりとスワンフがナラクーダの一味に襲われてるセイン」
ひかり「え、そ、そんな。でも、どこでっ?」
そのとき不意にひかりの背後の空間が割れ、ひかり、一気に吸い込まれる。
ひかり「キャ!」
ひかりが消えると、空間のひび割れもすっとなくなる。
アカネさん、たこ焼きのジュージューいう音のせいで、ひかりの悲鳴を聞けず、何事もないように、鼻歌交じりでたこ焼きピックをチョチョイと動かしている。
アカネ「ふふん、ふ〜ん♪」